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勘九郎が語る「猿若祭二月大歌舞伎」

勘九郎が語る「猿若祭二月大歌舞伎」

 2月2日(木)に初日を迎える、歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」に出演する中村勘九郎が、自身の出演演目と、勘太郎と長三郎の初舞台について語りました。

 歌舞伎座の2月は「猿若祭」と銘打った大歌舞伎。勘九郎の長男、波野七緒八が三代目中村勘太郎、二男の波野哲之が二代目中村長三郎を名のって初舞台を勤めます。

 

 「歌舞伎座は歌舞伎俳優にとって大切な、神聖な場所。そこで初舞台ができる喜びと、父(十八世勘三郎)、私たち、そして子どもたちが同じ演目で初舞台ができる幸せをかみしめながら、25日間、健康に気を付けてやるだけです」と、勘九郎は表情を引き締めました。初舞台となるのは、『門出二人桃太郎(かどんでふたりももたろう)』です。

 

親、子、孫が初舞台で勤める桃太郎

 勘太郎と長三郎は初舞台に向けて正月返上、アリゾナの家でも稽古し、帰国後も時差ボケと戦いながら稽古していたそう。「せりふはもちろん、動きと、踊りも三手、四手ございますし、後半には立廻りもあります」。立廻りは今回、新たにつけられたもので、「繰り返し繰り返し、何べんも何べんも」やって覚えているといいます。「勘太郎は、自分がなんとかしないと、という使命を負っているので、堂々とやれよ、と言っています。思えば、自分も幼い頃、父からそう言われていました」と、わが身を振り返りながら語りました。

 

 一方の長三郎は、「宇宙人。一回、ちゃんとできると、あとの稽古をしっかりしないので、困ります。私は、稽古からきっちりやらないと本番ができないと言われてきたので。といっても、まだ3歳ですから…」。これだけ大変な思いをしているのだから、しっかり今のことを覚えていてほしい、と願う勘九郎ですが、自分の初舞台(昭和62年1月歌舞伎座)の記憶は、「立廻りで刀を持たせてもらったのがうれしかった」くらいしか覚えがないとも言います。

 

 勘九郎と弟の七之助が初舞台で着けた鎧をまとっての桃太郎。自分たちの初舞台では幸四郎が勤めた犬役を、今度は染五郎が勤めたり、錦吾はこれで親子孫の初舞台での鬼役になるなど、周囲もさまざまな思いで、幼い二人の門出を祝います。勘九郎は「本当にありがたい」と、しみじみと感謝を口にしました。楽屋には勘九郎が初舞台で使っていた鏡台と、「(家紋の)隅切り銀杏の鏡が可愛い」十八世勘三郎の初舞台のときの鏡台が用意されます。

 

勘九郎が語る「猿若祭二月大歌舞伎」

上演の珍しい演目、ゆかりの演目で「猿若祭」を盛り立てる

 「猿若祭」の幕を開けるのは『猿若江戸の初櫓』、出雲の阿国と猿若の一座が江戸での興行を許されるという話です。「“今日の猿若でござる”のせりふがあって、父がいなくなって初めて舞う。気が引き締まります」。奇しくも2月の東京では、十八世勘三郎へのオマージュとして書き上げられた、野田秀樹の『足跡姫』も上演されます。「猿若、阿国が登場するんです。父のいたずらかわかりませんけれど」と、両座での阿国猿若の登場に、勘九郎は不思議な縁を感じているようでした。

 

 続く『大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)』は、中村座の初演ですが、今回は昭和44(1969)年1月国立劇場以来の珍しい上演となります。「南北、黙阿弥より50年、100年ほど昔の作品。雰囲気で面白く見せるのも、歌舞伎の魅力だと思います。難しいけれど、そこをきちんと表現していかないといけません」。清左衛門実は文覚上人に北条時政、夜の部では村人と鬼、「そして最後は芸者、いろいろな声を使い分けないといけない。大変ですよ」と、勘九郎。

 

 その芸者を勤める『梅ごよみ』は、深川の辰巳芸者同士の意気地の張合いが見せどころ。相手は菊之助の仇吉です。「意地と情けを大事に、きっぷのよさを見せられたら。芸者遊びっていいなあと思っている人たちが見ていた芝居ですから、現代にそういった深川の街や人の匂いを出すのが目標です」と、久々の芸者役に意欲を見せました。

 歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」は、2月2日(木)から26日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹にて販売中です。

2017/01/18