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猿之助、『ワンピース』開幕に向けての思い

猿之助、『ワンピース』開幕に向けての思い

 10月6日(金)の開幕を前に、新橋演舞場「スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』」演出・出演の市川猿之助が公演への思いを語りました。

進化した『ワンピース』、今度はここが違う

 平成27(2015)年10月・11月新橋演舞場の初演から大阪、博多と再演を重ね、磨きをかけてきた『ワンピース』。今回は、昨年8月に歌舞伎座『東海道中膝栗毛』で使ったLEDを、「ものすごくきれいだったから、今回、背景に舞台装置として入れました」。そして、第二幕のルフィの宙乗りで盛り上がるため、猿之助はお客様にも演出をつけ、劇場ではその演出に必要なスーパータンバリンが発売されます。

 

 「タンバリンをどうやって使ったらいいかわかるよう、開幕前から仕掛けを随所に施します。第一幕でも説明しますから、幕間にも手に入れていただけます。第二幕で説明されたのでは、お客様がもう買いに行けなくて楽しめないとか、皆がいろいろ考えてくれました」。スーパータンバリンには「(原作の)尾田栄一郎先生が絵とロゴを描いてくれたので」、一体感がいっそう高まりそうです。

 

 「何度もご覧になる方が、あそこが変わったんじゃないかと盛り上がっていただけるくらい、細かな演出をすごく変えています。今回の変更でお客様の反応が変わるはずなので、うまく変わらなかったら戻すかもしれませんが…」と言いつつも、初日に向けて稽古が順調に進んでいることをうかがわせました。

 

猿之助、『ワンピース』開幕に向けての思い

「麦わらの挑戦」は初日が開いてからが挑戦

 若手が大きな役を演じる「麦わらの挑戦」も、今回の公演の大きな話題です。「僕の役目は、初日に彼らをお客様の目に耐えられるようなスタートラインに立たせること。たぶん、立つと思います。でも、そこからですね。稽古中は演出家によしと言われないとだめですが、初日が開いたらお客様のために芝居をしますから」、それぞれが自分で課題を見つけることになるだろうと語りました。

 

 初演の稽古で、猿之助が演出する際に代役を勤めていたなか、「いつか自分もやるんだ、という気持ちで代役をやり、役をつかむチャンスをものにした」のが、ルフィ役の尾上右近。しかし、ずっと演じてきた猿之助は、ルフィはやりどころがない役だとも言います。「僕がこうやりたいと言うと、皆が真剣に考え、ついてきてくれる。皆の力がないと公演が成り立たない。たぶんそういうことが、ルフィになっていると思います」。先日3回目の自主公演「研の會」を開いた尾上右近も、「皆の大切さがわかり始めてきたはず」と、期待をかけています。

 

再演は古典への第一歩

 「新作をつくるとき、とりあえず積み重ねてみようというのが僕のスタイル。終点を決めて目指していくと、自分の基準で取捨選択することになり、いいものまで捨ててしまうかもしれないでしょう。そして、皆がいいということを積み重ねるのが初演だとすれば、やっぱりいらなかった、いやまだ足りなかったということができるのが再演」。再演が続けば、新作も古典として残ります。「いずれは全役が変わっても成立するように」と願っています。

 

猿之助、『ワンピース』開幕に向けての思い

 「稽古では必ず、君ならどうする、と聞きます。蜷川幸雄さんが僕に対してそうでした。だから、稽古場では皆が意見を言ってきます。活性化する、生き生きする。そういう場だから、皆が勉強するんです」。歌舞伎が積み上げてきた手法、先輩俳優の演技を知ることで、答えの幅が広がります。一方で、歌舞伎俳優ではない出演者は、「その他大勢がここで反応しないのはおかしい、不自然だというようなことを言ってくれます。歌舞伎で慣れてしまっていることに対して、新鮮な意見が聞けます」。

 

 宙乗り、音楽、笑いにこだわり、「お客様を置いてけぼりにしない」のが猿之助演出。「伯父の猿翁が目指していくことをやっていくつもりですが、こと『ワンピース』に関しては、それ以上のことをやっていると思います」。先輩たちにしか出せない味があるように、自分はアニメなどエンタテインメントの最先端を生きているという自負を持ち、自信にしています。「けれど、迷ったときに立ち返るのは、やはり『ヤマトタケル』『オグリ』といったスーパー歌舞伎。汲めども尽きぬ答えがそこにはあります」。

 「シャンクスの衣裳を変えようと思うんですけど、と尾田先生にうかがうと、いいよいいよ、と。それは漫画『ONE PIECE』の精神から外れなければ、何をやってもいいということ。だからこそ、意味をよく考えてやらないといけない」。頼りにしているのが巳之助と隼人。「先生、博士と呼んでいます。巳之助先生、ルフィはこうしてもおかしくない?と聞いて、いいと言ったことをやっています」。スーパー歌舞伎II『ワンピース』は、稽古場からすでに「ONE PIECE」の精神に充ちあふれ、麦わらの一味にも負けない絆で初日に向かっていました。 

 

 新橋演舞場「スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』」は、10月6日(金)から11月25日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2017/09/26