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芝翫が語る新橋演舞場『オセロー』

芝翫が語る新橋演舞場『オセロー』

 9月2日(日)~26日(水)、新橋演舞場で上演される『オセロー』に主演する中村芝翫が、公演への意気込みを語りました。

「オセローが大好きになりました」

 将軍オセローは旗手イアーゴーの奸計にかかり、愛する妻デズデモーナを信じられなくなる――。二世松緑に「芝居は前シテが大事。前がいいから後が立つ」と言われたことを引き合いに、「嫉妬、(ムーア人であることの)差別…、人生に積み重ねてきたコンプレックスが大きな山にならないと、『オセロー』は成立しないんじゃないか。いかに大きな山を自分のなかにつくっていくかが大変」と、芝翫は役づくりの難しさを挙げました。

 

 そのためには、「(芝居に入る)前のことが見えてこないといけません」。戦上手な将軍がデズデモーナに心動かされ、密会を重ね、ひそかに結婚式を挙げるに至るまでの役づくり、「そこまで持っていって、ぱっと言葉が出るようにしないと。歌舞伎でいうところの肚(はら)に落とす、に似ています」。表だって出ないところで積み重なっていく感情が、限界ぎりぎりのところで崩壊するのが『オセロー』の醍醐味と語りました。

 

 「オセローは面白い。誇り高き戦士であり、いろいろなものを抱えてもおり、心の奥底には闇があると思います」。前はイアーゴー役をやりたいと思っていたのが、今ではすっかり「オセローが好きになりました」と、目を輝かせました。

 

芝翫が語る新橋演舞場『オセロー』

稽古場には蜷川さんの椅子

 蜷川幸雄演出の『オセロー』でも助手を務め、その演劇を長年支えた井上尊晶の演出。「僕はシェイクスピアに関しては素人ですから、尊晶さんにすべて一任しています。稽古場の正面の机のところに蜷川さんの席がつくってあって、なんとなくじーんと来ました。演出に悩むと尊晶さんがそこに座ったりしているので、ああ、蜷川さんと対話しているんだろうなと」。“よき演出家”は“よきお産婆さん”がモットーだったという蜷川演出同様、「俳優を枠に固めるのではなく、自由に動かしてもらっています」。

 

 稽古は順調に進んでおり、「檀さんは、出てきただけでデズデモーナ」とその美しさ、たたずまいを絶賛、有名な「柳の歌」のシーンも「とても素敵。あの瞬間にオセローは悪役になってしまいますね」。一方、神山智洋のイアーゴーと前田亜季のエミーリアの夫婦は「新しい感じ」で、神山イアーゴーの「若さゆえのストレートさを、オセローとしてどう受けていこうか」、そこを逆手に面白さを出したいと意気込みました。音楽は松任谷正隆。「稽古の際にピアノを弾いてくださるんですが、本番は(いろいろな楽器が加わるので)こんなもんじゃありませんよって。これ以上豪華だと僕らが負けちゃいますよ(笑)」と、贅沢な稽古がうれしそう。

 

 苦労したのはせりふ覚え。7月は全国公演の移動中もずっとせりふ覚えに当てたものの、「デズデモーナ、と言うのも舌噛んじゃいそうでしょう。朗々と一人でしゃべらなければならないし、役を降りたほうがいいのかと思ったときもありました」。5年前、長ぜりふで知られる真山青果作品で配役変更があり、「『御浜御殿綱豊卿』を2日で覚えられたんだから」と自分を励ましつつ、「神山くんはすらすら覚えている。それこそ嫉妬しました」と、今となっては笑い話にする余裕も見えました。

 

歌舞伎のせりふ回しが活きる

 普通なら歌舞伎の色がリアルな芝居を邪魔することも多いけれど、今回は歌舞伎のせりふ回しが大きなプラスになると言います。同じ新橋演舞場で30年前にオセローを演じた北大路欣也からは、「シェイクスピア作品は不思議なもので、歌えば歌うほど真実味が出てくる」と言われたことを明かしました。

 

芝翫が語る新橋演舞場『オセロー』

 「ふだん、芝居でとうとうとしゃべっていると、せりふが足りないときがあるんです。もうひと言あればいいのにと。でも、シェイクスピアはしゃべっているといくらでも寄りかかれ、やっていて最高に楽しい。歌舞伎で生け殺し(せりふに強弱、抑揚をつける)を教わってきたことが活かせます」。シェイクスピア作品には「人間の嫉妬、誇り、悲しみ、憎しみ、愛、人間の持っている五感以上のものが表現されている。しっかりした本、大きな柱に寄りかかって稽古も形になってきています」と、稽古の充実ぶりをあらためて語りました。

 新橋演舞場の提灯の赤い灯が消えると同時に、お客様をヴェニスへと誘い、花道や客席も使ってぐっと引きつけておいて、「オーソドックスな演出で」俳優の力を存分に見せる。新しい新橋演舞場『オセロー』は9月2日(日)開幕。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2018年08月14日

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