ニュース

歌昇、種之助、吉之丞「子供歌舞伎教室」で『茶壺』上演

歌昇、種之助、吉之丞「子供歌舞伎教室」で『茶壺』上演

 『茶壺』 左より、中村歌昇、中村種之助

 11月23日(金・祝)、歌舞伎座で「第248回 子供歌舞伎教室」が開かれ、中村歌昇、中村種之助、中村吉之丞が『茶壺』を上演しました。

 公益財団法人都民劇場の主催で、昭和27(1952)年から続いている「子供歌舞伎教室」は、生徒、児童の皆さんに歌舞伎に親しんでいただく公演として回を重ね、今回が248回を数えます。毎回、若手歌舞伎俳優が大きな役に挑戦する場ともなっており、今回は、歌昇と種之助が吉之丞とともに、『茶壺』に挑みました。

 

実際に使われている歌舞伎の小道具を紹介

 早朝の歌舞伎座に詰めかけたのは、都内在住、在学の小学生から高校生と、その保護者の皆さん。学校単位での参加と抽選で招待されたおよそ1,600名が席に着かれ、定刻となったところで解説が始まりました。今回は趣向を凝らし、葛籠(つづら)を背負って藤浪小道具の関さんが登場、実際に舞台に使われる小道具のさまざまな刀を紹介しました。

 

 呂色の大小を手に取り、「これは樫の木でできていて、鉛を伸ばしてアルミホイルのようにしたものを貼っています」と、身近なものにたとえながらのわかりやすい解説が続き、「倉庫にある刀は1万本ではききません。演目に合わせて小道具が用意されます」と、歌舞伎の奥深さにもふれる内容に客席も興味津々の様子でした。

 

 『茶壺』についても、「昔はお茶は高級品で、ペットボトルで買うのとは違い、産地まで買いに行ったので疲れてしまいます。大人は疲れると酒を飲みたくなるんです」「人を見た目で判断してはいけませんが、歌舞伎はいいんです、悪そうな奴が悪い奴です」とのわかりやすい解説に、すっかり客席はリラックスモード。どんな舞台が始まるのか、期待がおおいに高まったところで、幕が上がりました。

 

踊りの面白さに引き込まれる『茶壺』

歌昇、種之助、吉之丞「子供歌舞伎教室」で『茶壺』上演

  『茶壺』 中村歌昇

 松羽目の舞台に長唄、鳴物の演奏が鳴り響き、「ざざんざー」と花道をやって来たのは、種之助の田舎者麻胡六。客席のすぐそばを通っての登場に視線が集中、わかりやすい手振り身振りで、すぐに舞台に引き込まれていきます。 

 

歌昇、種之助、吉之丞「子供歌舞伎教室」で『茶壺』上演

  『茶壺』 中村種之助

 酔って足元もおぼつかない麻胡六がうたた寝したところへ、今度はいかにも悪そうな風体の歌昇演じるすっぱの熊鷹太郎がやって来ました。さっそく茶壺をねらう太郎が茶壺の連雀を肩にかけ、目を覚ました麻胡六と取り合いになります。ここからは、正直者の麻胡六と麻胡六の真似をする太郎、見た目も対照的な二人が場内を沸かせ、おっとりとした吉之丞の目代は二人の間を行ったり来たり。茶壺がどちらのものかなかなか決着がつきません。

 

 無理に言葉を聞きとろうとしなくても、身振りやせりふの調子だけで話の筋がわかるのが舞踊の面白さ。そして、一人の踊りやせりふをもう一人が真似してもう一度見せるのが『茶壺』の楽しさ。微妙に違っていたり、うまくごまかしたり、真似されない工夫をしたりと、その器用さ意外さに何度も笑いが起こります。当て振りもわかりやすく、見ているうちに言葉の意味もわかってきて、客席がどんどん笑顔になっていきました。

 

歌昇、種之助、吉之丞「子供歌舞伎教室」で『茶壺』上演

  『茶壺』 左より、中村種之助、中村歌昇、中村吉之丞

 歌昇と種之助はこの1回限りの舞台のために稽古を重ね、その成果を十分に発揮しました。ただ単に振りを真似するのではなく、踊りの雰囲気をまったく変え、微妙に間を外したり、タイミングをずらしたりという難しさがあります。連れ舞では息が合ってこそのずれを見事にテンポのよい足拍子で表現し、舞踊を見る楽しさを伝えていました。最後は三人に惜しみない拍手が送られ、今年も歌舞伎の魅力をたっぷり味わっていただけた歌舞伎教室となりました。

2018/11/26