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尾上右近「第九回研の會」のお知らせ

　2025年7月11日（金）・12日（土）に大阪・国立文楽劇場、7月15日（火）・16日（水）に東京・浅草公会堂で尾上右近自主公演「第九回研の會」が開催されます。

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　右近が自らプロデュースし、平成27（2015）年より開催してきた自主公演「研の會」。9回目となる今年は、大阪と東京の2会場で、『盲目の弟』『弥生の花浅草祭』を上演します。

よりリアルな芝居に挑む

　『盲目の弟』は、昭和5（1930）年に、右近の曾祖父・六代目尾上菊五郎によって初演された作品。幼い頃、怪我で失明した弟と、その怪我を負わせた罪悪感を抱える兄を描きます。「歌舞伎の根本には、きちんとした人間描写、心理描写があるというのが六代目の考え。救いようのない暗い話ですが、インパクトがありました。僕はこれを愛にあふれた話だと感じます。世話物を飛び越えて、よりリアルなお芝居に挑戦することになります」と、闘志を燃やします。

　今回は兄の角蔵を右近、盲目の弟の準吉を中村種之助が勤めます。共演のきっかけは、右近が六代目菊五郎の写真集で本作を知り、それを聞いた種之助が、松本白鸚（当時九代目松本幸四郎）と二世中村吉右衛門の兄弟による昭和57（1982）年の上演記録を見つけたこと。二人で映像を観て、いつか共演を、と約束をしたと言います。そして物語の鍵となる、インバネスを着た客を勤めるのは中村亀鶴。「僕は亀鶴さんの嫌味な役のお芝居がとても好きなんです（笑）。信頼している先輩でもあり、お願いできてうれしいです」と、笑顔を見せます。

心おどる瞬間は一緒

　もう一つの演目は『弥生の花浅草祭』。種之助とともに、それぞれ4役ずつ勤めます。会見の当日、早朝から浅草・三社祭の宮出しに参加してきたことを明かした右近は、「『弥生の花浅草祭』は、まさに三社祭にちなんだ作品です。音楽は常磐津、清元、長唄の3ジャンルが使われますので、一粒で何度でもおいしい。お客様には、良いものを観たねと楽しい気持ちでお帰りいただける作品になると思います」と、太鼓判を押しました。

　体力的に大変な踊りとして知られますが、「種之助さんの踊りを僕は信じています。自分をぶつけつつ、彼の踊りを受け止めて、僕たちにしかできない舞台をつくりたい」と、志を語ります。同年代の種之助について、「やわらかさ、ふくよかさ、まっすぐさ、優しさ、奥ゆかしさ。そして独特の聡明さ」があると話し、続けて「自分にはないものをもっている。でも心おどる瞬間は一緒」であり、「心を許し、歌舞伎を抜きにしてもお互いに肚をわって付き合える。歌舞伎界イチ、心が幸せな男」と熱弁。その言葉から二人の絆の深さがうかがえます。

どなたにも楽しんでいただける公演

　「とにかく自分がやりたいことをその都度全力でやることがテーマ」だという「研の會」。区切りとなる次の第十回で終えることを伝えた右近は、「毎回開催できることが奇跡だと思っています。“研の會”としては10回目で終わりでも、僕には自分の思いをかなえてくれるチームができました。今後、何かをやりたいと思ったときには、公演ができる仲間がいる。これは確実に大きな財産です」と、晴れやかな表情を見せました。

　また一昨年、昨年に続き、今回も日本を代表するグラフィックデザイナーの横尾忠則が特別ポスターを手がけることも明かされ、期待を誘います。さらに、東京公演では、イヤホンガイドの貸出しサービスや、観劇サポート席の設置、バリアフリー字幕タブレットの貸出しなど、サービスを拡充。右近は「どんな方にも楽しんでいただける歌舞伎公演になれば。そしてそれが、また観に来ていただくきっかけに繋がれば」と、思いを込めて呼びかけました。