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仁左衛門が語る、歌舞伎座『梶原平三誉石切』

仁左衛門が語る、歌舞伎座『梶原平三誉石切』

 

 10月2日(土)に開幕する歌舞伎座「十月大歌舞伎」第三部『梶原平三誉石切』に出演する片岡仁左衛門が、演目についてと、公演に向けての思いを語りました。

16年ぶりの梶原景時

 歌舞伎座「十月大歌舞伎」の第三部では『梶原平三誉石切』が上演され、仁左衛門が16年ぶりに梶原平三景時を演じます。仁左衛門は、初めて景時を勤めた昭和53(1978)年、「山崎屋の権十郎のおじさん(三世河原崎権十郎)に、橘屋の十五代目(十五世市村羽左衛門)の型を教えていただいた」と、当時を振り返ります。その特徴について、刀で石の手水鉢を切る場面では前を向いて切るといった例をあげ、他の型と比べて「派手なんです」と表現しました。

 

 とはいえ、「派手さが先行して、人間味や優しさが飛んでしまうといけない」と心がけていると言います。「(景時に諭される)六郎太夫が、名僧から言われるよりも景時からの言葉の方がうれしいと感じられるような、それほどの人物でないといけない。六郎太夫に言い聞かせるときに、滋味があって、華があるようにできればと思っています。見た目だけでなく、なかに秘めたものも含め、やはり華やかさが大事」と、捌き役である景時の、魅力ある役どころを語ります。

 

仁左衛門が語る、歌舞伎座『梶原平三誉石切』

 

今も、新たな気づきがある

 見せ場をどうつくり上げていくかについて、せりふを何度も繰り返すうちに、また新たに気づくことがあるという仁左衛門。例えば刀の目利きの場面では、「これまでは流れるように言っていたせりふの、ある部分を強調しないといけないな、とかね」。そうした研究を重ね、見せ場を考えていくと明かします。「六郎太夫が自害しようとするのを止めるせりふも大切。そこも今回、工夫をしています」。日々、研究を重ねる様子に、変わらない芝居への情熱がうかがえます。

 

 芝居の研究だけでなく、日頃の鍛錬にも余念がありません。自粛期間中は、よく『勧進帳』の全配役のせりふをさらっていたそう。「(役によって)声の質が全部違う。太い、細い、固い、柔らかい、いろいろな使い分けをするという意味で、『勧進帳』というのは良いんですね。同じトーンでも役柄によって(声を)変える」。また、舞台に立つには足腰が大事と、1時間歩くことを日課として続けているというエピソードも飛び出しました。

 

舞台に立てる喜び

 舞台への出演は、今年の歌舞伎座「二月大歌舞伎」以来、半年以上ぶり。今の心境を表した「やっと舞台に立てる」というひと言に、万感の思いがこもります。今回、公演が決まってすぐにせりふの練習を始めたと明かし、「うきうきとしています」とにこやかに話す表情からは、久々に歌舞伎公演に出演する喜びが伝わってきます。

 

 時間的な制約や演出の変更など、これまでとは異なる状況下での公演について、「非常につらいことはありますけど、とにかく舞台に立てる。いつものように全力を尽くしたい」と、意気込みます。さらに、「役者はとにかくライブ。今現在を、生で観ていただけるのが最高の幸せです。この状況下でわざわざ来てくださるお客様に、来てよかったと思っていただけるよう頑張りたい」と、力強く決意を語りました。

 歌舞伎座「十月大歌舞伎」は、10月2日(金)から27日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。 

2020/09/18