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獅童が語る、歌舞伎座『義経千本桜』

獅童が語る、歌舞伎座『義経千本桜』

 

 11月1日(日)から始まる歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」第四部『義経千本桜』「川連法眼館」に出演する中村獅童が、公演に向けての思いを語りました。

思い出深い演目『義経千本桜』

 獅童が『義経千本桜』「川連法眼館」で佐藤忠信/佐藤忠信実は源九郎狐を勤めるのは、平成15(2003)年の「新春浅草歌舞伎」以来17年ぶりです。平成13(2001)年の平成中村座公演の試演会で、初めて一日だけこの役を勤めた経験があり、その2回とも、十八世中村勘三郎に指導を受けたという当時の様子を語った獅童は、「『四の切』の話をするといろいろなことを思い出します」と感慨深い様子。

 

 「母を思う、慕う気持ちだけで演じなさいと仰っていました。今回も、人を思う気持ちを伝えたい。歌舞伎は、型だけやっていたら人々の感動を呼ぶのかと言うとそうではなくて、型と気持ちが伴わず、どちらかが先行してもだめ。その本質的な大切な部分を教えてくださいました。当時の台本を久しぶりに開いたら、お兄さん(十八世勘三郎)に言われたことなどが忘れないように全部そこに書いてあるんです。今回はその台本をもとに、また勉強しなおしています」。

 

 また、初めて「新春浅草歌舞伎」で狐忠信を本役で勤めた際に両親からもらったという、石に狐の絵が描かれた置物の存在を明かした獅童。「いつか『四の切』をやらせていただくときに、これをお守りにしたいと思い大切に保管してありました。歌舞伎座に出演するときには、楽屋に置きます」。『義経千本桜』「川連法眼館」にまつわる数々の思い出を披露する様子から、公演にかける熱い思いが伝わります。

 

獅童が語る、歌舞伎座『義経千本桜』

 

17年を経ての再挑戦

 17年ぶりにこの役に再び挑む獅童は、「歌舞伎は一生かけて演じることができる。努力すれば、30代、40代、50代、60代の忠信があって、またお客様もそれを観続けて、人として、歌舞伎俳優としての成長を見ていただける。48歳の今にしかできない演技があると思うんです。私も17年の間にいろいろなことがありましたし、日々感じていることが表現につながり、役者の深みになるのではないかな」と、真剣な面持ちで語りました。

 

 「今の獅童がどう演じるのかというところは、舞台を観ていただけたらと思います。今まで生きてきたことをすべてぶつけるのが私の仕事ですから。全身全霊、命がけで役に向き合い、観ていただいたお客様が観てよかった、元気になったと思ってくだされば良い。今できることをすべてやらせていただくだけです。17年ぶりですが、挑戦は一生続きます」。

 

希望につながる舞台を

 獅童が、歌舞伎座で古典の主役を勤めるのは、初めてのこと。「歌舞伎三大名作の一つ『義経千本桜』を、歌舞伎座で、それも顔見世でやらせていただける」と、喜びを表します。「私が(主役を)やるからには、やはり若い人を抜擢して挑戦をしたかった。お弟子さんたちのこともいつも頭に浮かべて物事を考えるようにしています。私なりの挑戦です」と、今回の配役についての思いを明かしました。

 

 コロナ禍で、「舞台に出られない悔しさと、歌舞伎、演劇界の危機」を感じていたという獅童は、「本当に大変な時代ですが、人を思う気持ちや日本特有の文化である義理人情を大切にしないといけない。歌舞伎のなかにはそれがあるので、若い世代に伝えていくのが私たちの使命」と、力強く歌舞伎の未来を見据えます。

 

 「私たちは芝居しかできないですが、コロナで皆様が不安になっているときに、少しでも日常を離れて夢をみていただいて、泣いたり笑ったりして次の日の生きる希望につながれば。やはり皆さんに観ていただく仕事なんだなと思います。こういう時代だからこそ、お客様に楽しんでいただくということを今まで以上に意識するようになりました」と、公演に向けた熱い思いを語りました。

 歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」は、11月1日(日)から26日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。 

 

2020/10/19