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幸四郎、猿之助が語る「壽 初春大歌舞伎」
2021年1月2日(土)から始まる歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」に出演する松本幸四郎、市川猿之助が、公演に向けての思いを語りました。
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三代で勤める三兄弟
幸四郎は、第三部で上演される『菅原伝授手習鑑』「車引」に梅王丸として出演。松王丸の松本白鸚、桜丸の市川染五郎とともに、親子三代で三兄弟を演じます。「お芝居に、父と染五郎と一緒に出られる、またそれが『車引』であることは本当にありがたく幸せです。(染五郎も)稽古をうれしそうにやっている。もっているもの以上の力を出せるように頑張ってもらいたいですね」と、目を細めます。
さらに、梅王丸を勤めるにあたり、「そのせりふやボリューム、役の大きさを、自分の身ひとつで表現することを目指したい。また、先代の又五郎(二世中村又五郎)のおじさまから、花道を引っ込むときはくくり猿のようにと言われました。ただ力を入れれば力強く見えるものではない。鋭角的になるのでなく、くくり猿のような丸みをもつ。それが歌舞伎のおおらかさや色合いになるのだろうと。そのことを思い出して勤めたいです」と、意気込みました。
今こそ笑えるお芝居を
猿之助は、第一部で澤瀉屋の芸である『悪太郎』に出演。大酒飲みで愛嬌のある悪太郎を勤めます。「やっぱり、こういう世の中だからこそ笑いたいじゃないですか。稽古があまりできないなかでもやれるもの、また『悪太郎』はうち(澤瀉屋)しかできませんから、そういった珍しいものをお目にかけようと思って」と、この演目を選んだ理由を明かしました。
悪太郎という役柄については、「曽祖父(初世市川猿翁)にあてて書かれた、曽祖父の魅力があってこその作品なので。昔の映像を見ると、振りがどうということでなく、ただ立っているだけで面白いんですよ」と説明します。そうした技術面以外の部分を表現するのは難しいとしながらも、「ある意味もう吹っ切れた気持ちで、何も考えずにやるしかないですね」と、気合を入れます。
新しい公演形態で
「壽 初春大歌舞伎」は、8月の公演再開以来の四部制公演(各部総入れ替え、幕間なし、1演目)から、三部制公演(各部総入れ替え、幕間あり、2演目)に公演形態を変更して上演します。8月の公演からこれまでを振り返りながら、幸四郎は「お芝居を上演して、それを観ていただくということに特化した形でやってきました。現状のなかでどのようなことができるかを考えながら、大向うだったり、幕間のお土産選びだったり、そういった要素が皆そろった形でまた興行をやれたらいいなと、ずっと思っています」と、胸中を語ります。
猿之助は、11月歌舞伎座の「吉例顔見世大歌舞伎」『蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)』に出演したことに触れ、「早替りの芝居ができて、蜘蛛の糸もまくことができた。自分のなかでは大きな進歩でしたので、うれしかったですね。1月から三部制になりますので、これがまた進歩になる」と、前向きな思いを述べました。
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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」は、1月2日(土)から27日(水)までの公演。チケットは14日(月)から、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で発売予定です。
※「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です