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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」初日開幕

 

 1月2日(土)、歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 2021年1月より、歌舞伎座では三部制(各部総入れ替え、幕間あり、2演目)で公演を行います。今年も引き続き50%の座席使用率を維持し、座席の配置や換気、消毒など、感染予防対策を徹底してお客様をお迎えします。

 

 新年最初の演目はお正月らしい曽我物の舞踊、『壽浅草柱建(ことほぎてはながたつどうはしらだて)』。柱建ての儀式の場に居並ぶのは、曽我五郎(松也)、曽我十郎(隼人)、小林朝比奈(巳之助)、大磯の虎(米吉)、化粧坂少将(莟玉)、喜瀬川亀鶴(鶴松)、茶道珍斎(種之助)、小林妹舞鶴(新悟)、工藤祐経(歌昇)。「新春浅草歌舞伎」を彩る顔ぶれが七福神や鶴亀に見立てたおめでたい絵面できまると、清新なエネルギーが満ちた舞台に拍手が鳴りやみませんでした。

 

 二幕目は「猿翁十種」の一つである、舞踊劇の『悪太郎』です。千鳥足ながらも豪快な踊りを見せて花道に登場したのは、猿之助が勤める、酒好きの悪太郎。道中で出会った修行者、中村福之助が勤める智蓮坊に絡みだします。猿弥が勤める伯父の安木松之丞と鷹之資が勤める太郎冠者の策略により、自慢の鎌髭ごと剃られた悪太郎は改心し出家を決意、最後は軽快な三拍子のリズムに乗せて全員で連れ舞となります。客席に拍手と笑い声を呼ぶ、ユーモアに富んだひと幕です。

 

 第二部の幕開きは「坂田藤十郎を偲んで」と冠した『夕霧名残の正月』。四世藤十郎がたびたび演じた藤屋伊左衛門を鴈治郎、その思い人である扇屋夕霧を扇雀と、二人の息子が演じます。父、藤十郎が使用していた紙衣をまとい、姿を現す鴈治郎。恋人の死を知り、悲しむ伊左衛門のもとに、いつしか夕霧の幻が現れ、二人は懐かしげに舞い始めます。大切な人の在りし日を偲ぶ思いが、しっとりと歌舞伎座を包み込みました。

 

 続く演目は、『仮名手本忠臣蔵』より「祇園一力茶屋の場」。吉右衛門の大星由良之助、雀右衛門の遊女おかる、梅玉の寺岡平右衛門でお目にかけます。遊びにふける姿を見せつつ、心に仇討ちの思いをいだく由良之助の苦悩、身を売って支えた夫の死を知ったおかるの悲しみ、妹おかるを手にかける覚悟を決めた平右衛門の忠義心。三人それぞれの思いが、観る者の胸を打ちます。見応えある義太夫狂言の名作に、客席中が魅了されました。

 

 第三部は、高麗屋三代による『菅原伝授手習鑑』「車引」から始まります。主君の恨みを晴らすべく、彌十郎演じる時平に立ち向かう、幸四郎演じる梅王丸と染五郎演じる桜丸。二人を押し止めようと現れたのは白鸚演じる松王丸です。兄弟ながらも立場が異なる三人の、それぞれの隈取や見得、動きに、役柄や感情が表現され、歌舞伎ならではの様式美がにじみます。親子孫の三代がそろい、華やかさ際立つ見事な幕切れに、お客様から惜しみない大きな拍手が沸き上がりました。

 

 締めくくりは落語を題材とした世話物の『らくだ』です。芝翫が演じるのはやくざ者の手斧目の半次、愛之助が演じるのは朴訥な紙屑買の久六。半次が、らくだとあだ名がついた男の死体を抱え、久六にカンカンノウを唄わせる場面では、あわてふためく左團次と彌十郎演じる家主夫婦の姿に客席も抱腹絶倒です。お酒を飲むうちに乱暴になる久六と、驚いて弱気になる半次。立場が逆転した二人が繰り広げる滑稽な光景に、再び巻き起こった笑い声が劇場の外へあふれ出し、賑やかな初芝居の幕引きとなりました。

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」初日開幕

 

 歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、お正月飾りで華やかに彩られています。歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」は27日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2021/01/04