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玉三郎が語る、歌舞伎座『信濃路紅葉鬼揃』

玉三郎が語る、歌舞伎座『信濃路紅葉鬼揃』

 

 12月1日(水)から始まる、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」第三部『信濃路紅葉鬼揃(しなのじもみじのおにぞろい)』に出演の坂東玉三郎が、公演に向けての思いを語りました。

玉三郎が語る、歌舞伎座『信濃路紅葉鬼揃』

 

13年ぶりの上演

 『信濃路紅葉鬼揃』は平成19(2007)年に歌舞伎座で初演された、能の「紅葉狩」を題材とした舞踊劇。翌平成20(2008)年、南座で再演され、今回が13年ぶりの上演となります。「去年の12月の『日本振袖始』の上演時に、意外と後シテ物、派手なものを、お客様が好んでくださったので、今回はこの作品を選ばせていただきました。華やかさ、珍しさや、面白さを大事にしたいと思っています」と、切り出す玉三郎。

 

 「能楽の “紅葉狩” は世阿弥の後の時代に、それまでの幽玄の世界とは少し違う趣向でつくられた作品。とても迫力があり綺麗なので、その雰囲気を取り入れるため、振付の(藤間)勘吉郎さんたちと、いろいろ話しながらつくりました。音楽は長唄として完結しつつ、太棹もあれば、後シテに合うものをということでつくってもらいました」と、初演時を振り返ります。振付については、「能の手をいくつかアレンジしており、仕舞の形も入っていて、歌舞伎舞踊だけの心では大変難しいですね。共演者は初役の方ばかりですので、すでにお稽古を始めています。能楽の専門家の方に見ていただいても、よく真似たな、と思われるところまでいけたら」と、抱負を語りました。

 

玉三郎が語る、歌舞伎座『信濃路紅葉鬼揃』

 ▲『信濃路紅葉鬼揃』坂東玉三郎(撮影:福田尚武) 

お客様と同じ時間と空間の共有を

 「行楽の紅葉狩りは本来10月か11月のもの。ところが今は温暖化で、紅葉が12月にならないと見られない。京都での公演も12月でしたが、昔だったら野暮な話なんです」と、笑いをこぼしながらも、自身の環境問題への思いを明かします。「自然がさらに破壊されたら、劇場に来られるかどうかすら分からない時代も、やってくるかもしれない。社会、経済に目を向け、地球の問題を考えないと、自分が今、舞台で何をすべきか分からなくなります。環境問題に関連させて特にこれ、という芝居はないですが、無関係では考えられないと思い、長い間、自分の戯曲選びの裏付けとしてこだわってきました」。

 

 環境問題に触れることは、お客様へ何をお見せするかを考えるにあたって基本的な要素だといいます。「同じ時間と空間を共有することが難しい時代ですが、劇場は人の魂が慰められる場所だから皆集まってくる。できる限り、お客様と演じ手が同じ時間と空間を共有する、ということに終始していきたいと思います」と、舞台への強い思いをにじませました。

 

一年の締めくくりに向けて

 玉三郎が演じる鬼女は、正体を隠して紅葉狩りをし、やがて人間に退治される役どころ。「悲しさ、哀れはありますが、それよりも鬼がそろって華やかに出てくることが大切だと思います」としながらも、今年、歌舞伎座「九月大歌舞伎」で出演した『東海道四谷怪談』を例に挙げ、「芝居を通して、どんな人でも、どこかにあのお岩のような恨みの心が潜んでいることに触れる機会。だから長いこと演じられてきたのだと思いますし、そういう意味では、『信濃路紅葉鬼揃』も、恨みが核になると思います」と、語ります。

 

 『東海道四谷怪談』に加え、今年は歌舞伎座「二月大歌舞伎」の『於染久松色読販』、「四月大歌舞伎」と「六月大歌舞伎」の『桜姫東文章』でも、片岡仁左衛門との共演が続きました。「お客様もよく来てくださいました。自分なりに精一杯やった年だった気がします」と、振り返る玉三郎。一方で、「一つひとつ、装束を織ったり、お稽古を重ねて作品をつくることで、そういうものを求めている方たちの心が、和らいでいくのだろうと思っています。丁寧にお稽古したものじゃないと、幕が開けられないというのが、僕の思い」と、一年の締めくくりに向けて、心の内を明かしました。

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 歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は12月1日(水)から26日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

2021/11/16