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玉三郎、染五郎、團子が語る、歌舞伎座『火の鳥』

▲ 左より、市川團子、市川染五郎、坂東玉三郎、原純(撮影:岡本隆史)
2025年8月3日(日)に開幕する歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」第二部『火の鳥』に出演する坂東玉三郎、市川染五郎、市川團子が、演出・補綴・美術原案の原純とともに、公演に向けての思いを語りました。
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毎年恒例、多彩な演目を三部制でお届けする「八月納涼歌舞伎」。第二部では、「火の鳥」の伝説をもとに書き下ろされた新作の『火の鳥』が上演されます。歌舞伎狂言作者の竹柴潤一が脚本、オペラを中心に幅広い舞台の演出を手がける原純が演出・補綴・美術原案を担当。演出・補綴も手掛ける玉三郎が、手に入れれば不死の命を得られるという伝説の火の鳥を、染五郎と團子が火の鳥の捕縛を命じられた王子ヤマヒコ、ウミヒコ兄弟を演じる舞台です。

新たな世代への期待
「すでに数年前に『火の鳥』のことは頭の中にありました」と本作の構想を振り返る玉三郎。「『火の鳥』といいますと、ストラヴィンスキーの名曲や、バレエあるいは手塚治虫さんの作品などがありますが、それらを原作にするのではなく、火の鳥伝説をぜひ歌舞伎座で上演したく考えていました。昨年から染五郎さん、團子さんとご一緒しているうちに、お二人と共演できたらと思い、元々できていた脚本を改訂しながら今回に挑んだというわけです」と歌舞伎舞台化のきっかけを話します。
染五郎と團子については、「非常にまっすぐに生きてらっしゃる二人だと思います」と言及。「舞台に対して素直で謙虚であるということが、一生進歩し続けられる鍵だと思うのです。僕の感覚が鈍くならないうちに、いい作品をつくってあげたい、体験させてあげたいという思いがあります」と微笑みます。「(火の鳥では)二人がどういう人生観をもって、どういう芝居をしたいかを自由に話してもらい、つくり上げていきたい」と、次世代を担う二人に厚い信頼を寄せました。
作品のみどころについては、「観てよかったと思ってもらいたいです。まだ稽古を始めていないのでわからない部分が多いですが、歌舞伎座に新しい空気というか、風が吹いて、(染五郎と團子の)二人と、演出の原さんのつくり出す空間的なものが融合して。空気感や、音楽的、技術的なものをひっくるめて、いい空間だったと楽しんでいただけたら」と熱い思いをにじませました。

歌舞伎と現代の融合
演出・補綴・美術原案の原は、「オファーを聞いたときには本当に驚きました」と感慨深く話します。「オペラと歌舞伎は、生まれた時代が大体同じくらいなんですよね。なおかつ音楽と踊りがあって進行していくお芝居という共通点がある。玉三郎さんと何度もお打合せをさせていただくなかで、結局は、お客様にどれだけ喜んでいただく舞台を創造するかという点で変わりはないと考えました」と、自身初となる歌舞伎の演出へ意欲を見せました。
今作の演出のポイントについて問われると、「一番こだわりをもたせたいのは、音楽を主軸にドラマが深まっていくということです。今回は、吉松隆さんという素晴らしいコンポーザーの音楽を全編で使う予定です。また振付では歌舞伎の動きと、洋舞の動きのコラボレーションができないか模索しています。歌舞伎俳優の皆さんが今まで蓄積された表現方法と、現代的な音楽、振付が合わさって、どのような新たな世界が生まれるか見届けたいです」と、期待に胸を膨らませました。

公演へ向けて
染五郎はヤマヒコについて、「最初はあくまで、火の鳥を捕まえに行くことが目的なのですが、最終的には火の鳥から、何か生きるうえで大きなものを授かるようなお役だと思っております」と思いを馳せます。歌舞伎座「七月大歌舞伎」『蝶の道行』でも共演中の團子については、「ヤマヒコとウミヒコとの関係性は本作の一つの筋になっていると思いますので、今月二人でつくった距離感、熱量のまま勤められたら」と意気込みました。
今回で3度目となる玉三郎との共演については、「昨年の9月は『吉野川』、10月は『源氏物語』でご一緒させていただきました。1番は声の出し方を、人体の断面図のようなものを見ながら教えていただき、本当に新鮮な経験でした。教えていただいたことを毎回意識しながら舞台に臨んでいて、とてもありがたい経験だと思っております」と感謝の意を述べました。

團子は、「ウミヒコは王位を継承する兄ヤマヒコに対して、若干しこりを抱いているお役。二人の関係性が、火の鳥から学びを受けることを通して繋がっていくという、本作の抽象的な部分も担っていると思います」と、役についての解釈を話します。「玉三郎のお兄さんとは昨年12月の『天守物語』でご一緒させていただきました。発声や、役に対する解釈もすごく深いところまで教えていただき、そこで得た台本を読み解く方法というのは、非常に大きな財産になっております」と、玉三郎との共演を振り返りました。
同世代での共演について問われると、「切磋琢磨できることをうれしく思います。(染五郎とは)昔から赤裸々に舞台で思ったことを伝え合う関係性。今作のように兄弟の話が一つの筋になるくらい重要なところでは、深くセッションをしていくことが大切だと思います。いい意味で言いたいことを伝え合える関係を通して、今回もとてもいい方向に行くのではないかと思っています」と、これから始まる稽古に向け意欲を見せました。
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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」は、8月3日(日)から26日(火)までの公演。チケットは7月14日(月)より、チケットWeb松竹、チケットホン松竹ほかで発売予定です。