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梅玉、松緑が語る、歌舞伎座『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」

梅玉、松緑が語る、歌舞伎座『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」

 

 2月1日(火)から始まる、歌舞伎座「二月大歌舞伎」第一部『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」出演の中村梅玉、尾上松緑が、公演に向けての思いを語りました。

 真山青果の代表作『元禄忠臣蔵』のなかでも、特に人気の場面「御浜御殿綱豊卿」。仇討ちの心を探る徳川綱豊卿と、その本心を悟られないように答える赤穂浪士・富森助右衛門の重厚かつ白熱したせりふの応酬は、本作の最大のみどころです。このたびは、これまでにも何度も演じた経験がある梅玉の綱豊卿と、初役で挑む松緑の助右衛門の顔合わせで、新歌舞伎の傑作をお届けします。

 

梅玉、松緑が語る、歌舞伎座『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」

 

“御浜御殿”を望んで

 取材会場の竹芝・メズム東京から作品の舞台となった浜離宮恩賜庭園を一望し、「綱豊が六代将軍徳川家宣になって、自分がかつて住んでいた御浜御殿を見下ろしている思いです」と、笑顔を見せるのは梅玉です。松緑は過去に庭園内を訪れたことがあると語り、「こうして上から見下ろす機会はなかなかないですが、舞台の大道具と同じだと思う部分もあり、このような風情のなかでストーリーが進行したのだと改めて感じました」と述べました。

 

梅玉、松緑が語る、歌舞伎座『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」

 

 梅玉が初めて綱豊を演じたのは、ちょうど30年前の梅玉襲名披露狂言でのこと。「30年の節目のときに、また大好きな綱豊をやらせていただくことは、本当に幸せでありがたいことだと思っています。このお役は鬱屈したところがまったくなく、演じていて気持ちのよい、素敵なお役です。松緑さんとも久しぶりの共演で、彼とどんな対決をするか、今からワクワクしております」と、今回の上演に向けての思いを口にします。

 

 松緑は助右衛門について、「この年まで勤めることがなかったので、一生縁がない役だろうと思っていました。今回させていただくことになり、青天の霹靂と言いますか、とてもうれしく、チャンスをいただけたことにお礼を申し上げたい」と、初役で挑む喜びを率直に口にします。「『御浜御殿』における自分の到達点は、おそらく助右衛門なのではないかと思っています。ずっと勤めていきたいお役ですので、その1回目として、梅玉兄さんの胸を借りて、全身全霊でぶつかっていきたいと思います」と、気を引き締めました。

 

再演と初演、それぞれの難しさ

 今回の上演に際し、「もちろん歌舞伎のお役はなんでもそうですが、再演のたびに難しさが増していきます。毎回新しい挑戦をしていますが、年を重ねるにしたがって綱豊に大切な風格を少しでも出せるよう、テクニックとは別の部分でも心がけて勤めたい」と、梅玉。初演時に受けた演出の真山美保からの指導を懐かしみながら、「あなたはあなたで、あなた自身の綱豊卿をつくり上げなさいと常々言われておりました。今回はまた改めてもう一度原点に振り返って勉強しなおしたい」と、さらなる追求に余念がありません。

 

梅玉、松緑が語る、歌舞伎座『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」

 

 一方で松緑は、「青果の作品は他と比べ、ト書きで風情や心情がとても細かく書かれていますので、大まかな幹から外れることはないとは思うのですが、(過去に同じ役を演じた)父の匂いもどこか残しつつ、これまで拝見してきた先輩方それぞれの魅力を混合させてつくっていけたらと考えています。毎日工夫をして、役になろうと思わなくてもすっと助右衛門に入れるように」と、新たな一歩への抱負を語りました。

 

 役について梅玉が、「高所からこの忠臣蔵の世界のすべてを見ていて、それを自分の言葉できちんと表現する。ですから綱豊の声は神の声に聞こえるような、そういったお役です」と説明すると、松緑も、「そんな綱豊卿の話に引き込まれて、最初は拒絶していたものが、だんだん喧嘩ごしになり、最後は心から説き伏せられる。助右衛門のその心の変化が、演じていておもしろい部分では」と、続けます。二人が織りなすドラマに、今から期待がふくらみます。

 

 

息の合った芝居で見せる「御浜御殿綱豊卿」

 「(松緑の)お父さんと同い年だからね。昔から松緑さんとは仲良くしておりますので、芝居の間の息は合うと思います」と梅玉が言うように、親交が深く、確かな絆をのぞかせる二人。松緑も、「子どもの頃からご一緒させていただいておりますので、楽しみな来月です」と、顔をほころばせます。「松緑さんは助右衛門のお役が性格的に合っている。一途に仇討ちのことだけを考えている感じが出るのでは」と、梅玉に太鼓判を押され、松緑が恐縮するひと幕も見られました。

 

梅玉、松緑が語る、歌舞伎座『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」

 左より、尾上松緑、中村梅玉

 お客様へ向けては、梅玉が「こんな状況ですから、それを乗り越えて歌舞伎座に来てくださったお客様に、来てよかった、いい芝居が観られてよかったとお帰りいただけるよう、充実した舞台をつくり上げていくことが使命だと思っています」、松緑が「第一部をご覧になったお客様が、嫌なことを忘れ晴れやかな気持ちで、少し口角を上げて帰っていただけるような舞台にしたいです」と、それぞれに強い思いを込めてメッセージを伝えました。

 歌舞伎座「二月大歌舞伎」は2月1日(火)から25日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

梅玉、松緑が語る、歌舞伎座『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」

 「御浜御殿綱豊卿」の舞台となった浜離宮恩賜庭園をバックに

2022/01/17