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玉三郎、喜多村緑郎、河合雪之丞が語る、歌舞伎座『ふるあめりかに袖はぬらさじ』
6月2日(木)から始まる歌舞伎座「六月大歌舞伎」第三部『ふるあめりかに袖はぬらさじ』に出演の坂東玉三郎、喜多村緑郎、河合雪之丞が、公演に向けての思いを語りました。
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昭和47(1972)年に有吉佐和子が生んだ戯曲、『ふるあめりかに袖はぬらさじ』は、新劇や歌舞伎、新派と、さまざまな舞台で上演されてきた名作。横浜の遊廓を舞台に、幕末という激動の時代を生きる人々を描いた、笑いにあふれながらも深く胸に迫る物語です。今回の上演では、玉三郎が、これまでもたびたび演じてきた芸者お園を、劇団新派の喜多村緑郎が思誠塾岡田を、同じく河合雪之丞が遊女亀遊を勤めます。
特別な戯曲
本作の歌舞伎座での上演は平成19(2007)年以来、15年ぶりです。玉三郎は、「有吉先生は、歌舞伎舞踊をお書きになられたり、舞台転換をあまり使わないなど、古典様式を使った現代劇作家でいらした。そういう点でも、(本作は)歌舞伎座に合うと思っています」と述べました。
「有吉先生が演出してくださったら何とおっしゃるかしらと、想像しながら台本を読んでいました」と、しみじみと口にした玉三郎。初めて本作を見たときに、「有吉先生の洞察力、世の中を俯瞰している目を感じました。芝居上では何も言わず、笑いのなかで日本のありようの真髄を突いていると、非常に感銘を受けました」と振り返ります。
さらに、「否定も肯定もできないことを突き付けられるという点が、この戯曲のすごいところ。勤皇も佐幕もどちらでもない。アメリカや日本を否定しても肯定してもいない。お客様を深刻にさせないままに深いところに突き刺さるという、特別な戯曲だと思います。こうした、笑いながら人生をしみじみ感じる戯曲、笑い転げながら後でしんと考える戯曲って、日本にはなかなかないのでは」と、滔々と語る言葉に、幾度もお園を演じてきた玉三郎ならではの、作品への強い思いが感じられます。
久しぶりの歌舞伎座出演
8年ぶりの歌舞伎座出演となる緑郎は、「大和屋の若旦那(玉三郎)にお声がけいただけて、心の底からうれしい限りです。魂もひどく震えております」と、緊張の面持ちです。15年前の歌舞伎座公演では、市川段治郎として思誠塾の青年、多賀谷を演じていましたが、今回は同じ思誠塾の岡田を勤めます。「少し年かさで、皆より思慮深いところがなければならない。必死にお稽古しております」と言い、「新派に移籍してから、他のジャンルのお芝居に触れる機会が増えました。今回、自分の感じ方や演じ方がどう変わるのか楽しみです」と、真摯に語ります。
また、6年ぶりに歌舞伎座へ出演する雪之丞は、市川春猿として出演していた前回の歌舞伎座公演を思い返しながら、「この大好きなお芝居に、また歌舞伎座で呼んでいただけて、私も震えが止まらない思いです」と挨拶しました。亀遊について、「(演出の)齋藤雅文先生から、きりっとしすぎず、歌舞伎でいう娘方のような雰囲気をもって、とおっしゃっていただいた。それを心がけて」稽古を始めていると明かし、久々の歌舞伎座に向けて、着実な準備を重ねていることがうかがえます。
勉強のために過去の舞台映像で自分の出る場面を見ようとすると、引き込まれてつい全部見てしまう、と口々に語る緑郎と雪之丞。さらに雪之丞は「大和屋の若旦那のお園が大好きで、毎日本当にうれしくて」と、目を輝かせます。玉三郎も二人との共演を、「大変うれしく思います」と喜び、出会って30年以上になると振り返りながら、お互いに和気あいあいと思い出を語り合う場面も。改めて玉三郎から二人に向け、「気楽にやっていただきたいですね。昔から一緒にやってきましたし、特別な感じはあまり無いのです。楽しみにしています」と、期待を込めたエールを送りました。
玉三郎は、「歌舞伎と新派にあまり垣根は感じていません。もともとあった歌舞伎を『旧派』と呼んで、歌舞伎的な様式をもちながら近代劇をやろうと生まれた演劇を『新派』と呼ぶようになったようです。今回は、おふたり以外の新派の方々も来てくださいます。これが良いきっかけとなり、いつでも一緒に芝居ができるようになれば」と、思いを述べました。
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歌舞伎座「六月大歌舞伎」は、6月2日(木)から27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。