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歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 

 6月2日(木)、歌舞伎座「六月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 今月も、歌舞伎座は三部制(各部総入れ替え、幕間あり)での公演。客席は間隔を空けた2席並びを原則とする配置で販売し、引き続き換気、消毒など、感染予防対策を徹底してお客様をお迎えします。

 

 第一部は、歌舞伎三大名作の一つ『菅原伝授手習鑑』「車引」で幕を開けます。巳之助の梅王丸の荒事の演技、壱太郎の桜丸の和事味ある演技の対比が楽しく、梅王丸が豪快な飛び六方で花道を引っ込むと、会場の熱気が高まります。松緑の松王丸は、若々しいやり取りのなかにもどっしりとした落ち着きを見せ、猿之助が初役で勤める時平は凄みのある姿で、作品に奥行きを加えました。梅王丸、桜丸、松王丸の三兄弟がさまざまな見得を披露すると、錦絵のような歌舞伎の醍醐味を感じられるひとときに、大きな拍手が送られました。

 

 続いては、賑やかな舞踊劇『猪八戒』です。歌舞伎座の本興行では初演以来、95年ぶりの上演となる、澤瀉屋ゆかりの演目です。猿之助勤める猪八戒が女の童に扮し、生贄の身代わりとなって猿弥勤める魔神・霊感大王に対峙する場面はみどころです。正体が明らかになった猪八戒と霊感大王との立廻りの場面では、尾上右近勤める孫悟空、青虎勤める沙悟浄たちが加わる、アクロバティックでスピーディーな展開に、興奮が高まる客席からの拍手が鳴り止みませんでした。

 第二部の幕開けは『信康』。26年ぶりの上演では、歌舞伎座初主演となる染五郎が、非業の死を遂げた徳川家康の嫡男・徳川信康を勤めます。鷹狩から居城である岡崎城へ戻ってきた、若々しく、活気に満ちた信康。そこへ白鸚が勤める父・徳川家康が来訪すると、突如として岡崎を離れるよう命じられます。一カ月の後、舞台は遠州二俣城に。岡崎での生き生きとした姿と、一転して自らの境遇を憂う姿とのギャップが観客を惹きつけます。そして父・家康が自らを生かすためにとった行動を知った信康は、父の思いを深く理解し、ある決断をします。密度の高い芝居に、客席から力強い拍手が送られました。

 

 続いては、舞踊『勢獅子』です。山王祭で賑わう江戸の街。鳶頭の梅玉、松緑、芸者の雀右衛門、扇雀と華やかな顔ぶれがそろいます。ほろ酔い気分の鳶頭たちは曽我兄弟の仇討ちの物語、威勢のいい獅子舞を賑やかに披露し、祭り気分は一気に盛り上がりを見せます。江戸の風情を描いた賑やかな常磐津が耳に心地よく、さまざまな踊りが目に楽しい変化に富んだひと幕に、歌舞伎座は華やかな雰囲気に包まれました。

 第三部は、有吉佐和子による演劇界屈指の名作『ふるあめりかに袖はぬらさじ』。玉三郎が、当り役である芸者お園を演じます。開港して間もない横浜の遊廓岩亀楼。三味線の名手でもある芸者のお園は、劇団新派の河合雪之丞演じる、病に伏せる遊女、亀遊を見舞いに行きます。そこへ医者を目指す、福之助演じる通訳の藤吉がやってくると、お園は亀遊が藤吉に抱く思いに気づきます。気風の良いお園の様子と、はかなげな亀遊の姿が印象的に浮かび上がり、さりげない仕草から人の良さを感じさせるお園の姿が巧みに描かれます。

 

 鴈治郎演じる岩亀楼の主人は、金に目が眩み、アメリカ人からの亀遊の身請け話を承諾します。藤吉を思う亀遊は恋に絶望し自害しますが、瓦版がその死の事実を歪曲して伝えると、岩亀楼は攘夷派の志士たちの聖地に。物語の後半、真実を知るお園が敢えて廓の客の期待を裏切らないように、亀遊の物語をとうとうと語る場面は大きなみどころ。思誠塾岡田を勤める、劇団新派の喜多村緑郎は、きっぱりとしたせりふで存在感を見せます。観客は、幕末の時代にタイムスリップして一部始終を目撃したかのような、没入感のある観劇体験を味わいました。

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、6月30日(木)まで「Used & Outlet CD・DVDセール」にて、懐かしの名作、名盤、貴重盤のCDやDVDを販売中です。1枚しかない貴重な品もありますので、ご興味のある作品を見つけに、歌舞伎座ご来場の際にはぜひお立ち寄りください。

 

 歌舞伎座「六月大歌舞伎」は27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

※「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です

2022/06/06