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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」初日開幕

2025年8月3日(日)、歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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▲ 前列左より、中村橋之助、中村隼人、坂東新悟、中村七之助、松本幸四郎、中村勘九郎、中村長三郎、坂東巳之助、中村米吉、大谷廣太郎/後列左より、中村福之助、中村玉太郎、中村勘太郎、市川團子、市川染五郎、中村歌之助、中村虎之介、市川男寅
今年も三部制で上演する、歌舞伎座の夏の風物詩「八月納涼歌舞伎」。初日の開場前、歌舞伎座の正面玄関前に、出演者18名がそろいの浴衣姿でずらりと登場しました。劇場前に詰めかけたお客様の拍手や声援に、思い思いに手を振って応える出演者たち。18名を代表し、幸四郎、勘九郎、七之助、巳之助、新悟、米吉、隼人、橋之助、染五郎、團子がご挨拶しました。
幸四郎は、「今年の八月納涼歌舞伎は“衝撃の八月納涼歌舞伎”と思っております。ぜひ皆様にびっくりして、興奮していただき、暑さを吹き飛ばす、そういう時間にしたいと思います」と、笑顔で宣言。勘九郎からは、「各部とも古典、新作、踊り、そして久しぶりの上演のものと、いいラインナップで楽しんでいただける納涼歌舞伎になっています。今、“国宝”効果で歌舞伎がブームになっていますが、これを“ブーム”で終わらせないよう一所懸命勤めます」と意気込むと、幸四郎の発声で皆が「歌舞伎座でお待ちしています!」と呼びかけました。出演者が手にする直筆のうちわは、公演期間中、歌舞伎座2階のロビーに展示されていますので、ご観劇の際はぜひご覧ください。また、ご観劇いただいたお客様にうちわが当たるキャンペーンも実施中。詳細はこちらをご確認ください。
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今年の「納涼歌舞伎」の第一部は、31年ぶりの上演となる新歌舞伎『男達ばやり(おとこだてばやり)』で幕を開けます。町奴の朝日奈三郎兵衛(巳之助)と旗本奴の三浦小次郎(隼人)は、上野不忍池に身投げした六兵衛(橘三郎)を助けるため、互いの男伊達を競います。二人を中心に、とま(米吉)と又兵衛(橋之助)の夫婦ら周囲の人々が繰り広げるおかしみのあるやりとりに場内からは笑いが起きます。江戸の“粋”を競い合う朝日奈と三浦の対立を痛快に描いた作品に、満場の客席は大いに盛り上がりました。
続いては、幸四郎と勘九郎による舞踊2題。荘厳な雰囲気で始まる『猩々』では、大好きな酒を飲んでほろ酔い加減の猩々(幸四郎、勘九郎)が、時にかわいらしく、時にダイナミックに、それぞれの個性を発揮しながらも、息の合った踊りを見せると、「高麗屋!」「中村屋!」の大向うとともに、大きな拍手が起こりました。続く『団子売』は、賑やかな天神橋を舞台に、仲睦まじく愛嬌のある団子売の夫婦、杵造(幸四郎)とお福(勘九郎)が明るく朗らかに踊ります。まるで本物のような餅つきの様子とその小気味のよさに場内が沸き立ちます。二人の踊りで幸福感に満ちた雰囲気に客席が包まれ、第一部は華やかに打ち出しとなりました。
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第二部は、日本神話の八岐大蛇退治をもとにした『日本振袖始』で幕を開けます。今回は、これまで岩長姫を演じてきた玉三郎監修のもと、七之助が初役で岩長姫実は八岐大蛇を勤めます。生贄の稲田姫(米吉)のもとへ、花道から岩長姫(七之助)が登場すると、場内からは大きな拍手が起き、その一挙手一投足を固唾をのんで見守ります。毒酒を飲み干し、舞に興じながら徐々に本性を現していく岩長姫。そこへ登場した素盞嗚尊(染五郎)の凛々しい姿に場内の空気が引き締まり、大蛇の分身も加わった八岐大蛇との迫力ある立廻りに客席のボルテージは急上昇。妖しくも美しく、豪奢で古風な雰囲気の漂う舞踊劇にすっかり目を奪われました。
「火の鳥」伝説をもとにした『火の鳥』。病床の大王(幸四郎)の指示で、ヤマヒコ(染五郎)とウミヒコ(團子)は火の鳥を求める過酷な旅に出て、互いの絆を深めていきます。黄金の実をつけた林檎の木を見守るイワガネ(新悟)から毎夜火の鳥が現れることを聞いた二人の王子。そこへ火の鳥(玉三郎)が姿を現し…。玉三郎の演出・補綴、オペラ演出などで活躍する原純の演出・補綴・美術原案により、衣裳や鬘、照明、舞台装置をはじめ、出演者の動きと映像の融合や、舞踊家・森川次朗の振付によるダンサーの舞、作曲家・吉松隆の壮大な音楽が、幻想的な世界をつくり出します。玉三郎が演じる火の鳥が舞い上がると、場内からは割れんばかりの拍手が送られました。
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第三部は、賑やかな舞踊『越後獅子』から。江戸は日本橋。舞台上には獅子頭をかぶった角兵衛獅子の橋之助、男寅、中村福之助、虎之介、玉太郎、歌之助、青虎と華やかな顔ぶれがそろい、浜唄やおけさ節、布を波に見立てた布さらしを披露して、華やかに踊ります。花形俳優七人の角兵衛獅子が披露するさまざまな踊りが目に楽しく、若々しいエネルギーが躍動し、歌舞伎座は華やかな空気に包まれました。
第三部の締めくくりには、『野田版 研辰の討たれ』を、20年の時を超えて、新たな顔ぶれでお届けします。元は刀の研屋でお調子者の辰次(勘九郎)は、赤穂浪士の仇討ちに沸き立つ道場で、仇討ちの馬鹿馬鹿しさを言い放つと、粟津藩主奥方萩の江(七之助)の面前で、家老の平井市郎右衛門(幸四郎)に散々に打ち据えられます。仕返しをしようと仕掛けたからくりが元で市郎右衛門を死なせてしまうと、平井九市郎(染五郎)と才次郎(勘太郎)兄弟に親の仇として追われることに…。怒涛の如く繰り出される膨大なせりふ、躍動感あふれるエネルギッシュな姿、さまざまな表情を見せる辰次をはじめ、個性豊かな登場人物が生き生きと舞台上を駆け抜けます。幕切れには鳴り止まない拍手とともに大きな感動に包まれると、野田秀樹も舞台に駆け付けてのカーテンコールも。コミカルな展開のなかに、現代社会にも通じる群衆の怖さが描かれた、笑って泣ける極上のエンタテインメント『野田版 研辰の討たれ』。「野田版歌舞伎」に新たな歴史を刻みました。
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歌舞伎座地下2階の木挽町広場(かおみせ)では、8月期間限定で老舗店の銘菓を特別販売いたします。観劇の際はぜひお立ち寄りください。
歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」は、26日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。