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歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」初日開幕

 

 2022年10月4日(火)、歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 第一部は、『鬼揃紅葉狩』で幕を開けます。舞台は紅葉が美しい秋真っ盛りの信濃国戸隠山。平維茂(幸四郎)が従者を連れた紅葉狩で出会ったのは、美しい姫君更科の前(猿之助)。維茂たちは誘われるままに盃を重ね、更科の前の艶やかな舞にうっとり心奪われます。やがて維茂がまどろんでしまうと、姫は鬼女に豹変。維茂を救おうと神女八百媛(雀右衛門)が登場すると、舞台にどこか神聖な雰囲気が漂います。迫力満点の鬼女と、凛々しい維茂との立廻りには目が釘付けとなります。紅葉の葉が舞い散るなか、能の高雅さと歌舞伎舞踊の華麗さを融合した、変化に富み勢いあふれるひと幕に、劇場は大いに盛り上がりました。

 

 続いては、『荒川十太夫』。「赤穂義士外伝」の一つで、講談師で人間国宝の神田松鯉が得意とする講談の名作を新作歌舞伎として上演します。舞台は松緑勤める荒川十太夫が介錯をつとめた、赤穂義士堀部安兵衛(猿之助)の切腹の回想場面から始まります。舞台が赤穂浪士の七回忌の墓参に人々が行きかう泉岳寺に移ると、十太夫は下級武士に似つかわしくない立派な身なりで登場し、偶然居合わせた松平家目付役の杉田五左衛門に咎められ…。十太夫の苦悩を滲ませつつも武士としての覚悟を感じる姿、絞り出すような熱のこもったせりふのひと言ひと言が人々の心を揺さぶります。新作でありながらも、まるで古典作品のような味わいを感じさせる充実の舞台に大きな拍手が送られました。

 第二部は、『祇園恋づくし』から始まります。幕が開くと舞台は京都の茶道具屋。主人の次郎八(鴈治郎)から祭見物に誘われ、逗留している江戸の指物師留五郎(幸四郎)は、京都は居心地が悪いと江戸に帰ろうとしますが…。次郎八が出かけたかと思うと、しっかり者の女房おつぎの姿に早替りした鴈治郎がすぐに登場し、場内には拍手が巻き起こります。続く岩本楼の座敷の場面では、男前な留五郎から一変、美しい芸妓染香の姿で登場した幸四郎に拍手が。染香にぞっこんの次郎八が情熱的に口説く様子と、その場を乗り切ろうと逃げ回る染香の様子が客席の笑いを誘います。最大のみどころでもある次郎八と留五郎のお国自慢の場面では、風情ある京都の川床を舞台に次々と繰り出される流れるようなせりふの応酬に目が離せません。明るく賑やかな空気に包まれたひと幕となりました。

 

 続いては、松羽目物の舞踊『釣女』。常磐津のゆったりと重厚な音色が心地よく響くなか、太郎冠者(松緑)と大名某(歌昇)がやってきます。妻をもとうと、大名が釣竿をさげると、世にも美しい上臈(笑也)をつり上げます。これを見た太郎冠者は、自分も美しい妻をめとりたいと釣竿をさげますが...。太郎冠者と醜女(幸四郎)のやりとりは、大らかでおかしみあふれる場面。華やかな雰囲気が漂う舞踊に、客席が明るくなりました。

 第三部は、『源氏物語 夕顔の巻』で幕を開けます。舞台は中秋の名月の夜。光源氏(梅玉)は惟光(市蔵)を供に連れ、意中の夕顔の屋敷にやってきます。月の光に照らされた気品あふれる源氏の姿。出迎えた夕顔(孝太郎)が光源氏から与えられた装束を身にまとい舞を披露し、二人が連舞を舞うなか、舞台は清涼殿に。怪しげな気配とともに六條御息所(魁春)が現れると、嫉妬の念に支配されながらも品格を損なわない御息所の洗練された姿が強烈な印象を残します。華やかで幻想的なひと幕に拍手が送られました。

 

 幕切れは世話物の傑作『盲長屋梅加賀鳶』。悪事を重ねる按摩の道玄を軸とした物語で、今回は芝翫が初役で竹垣道玄を勤めます。舞台は日暮れのお茶の水の土手際から始まります。按摩の道玄は人殺しもいとわない悪党。平然と人を手にかけ立ち去りますが、途中で煙草入れを落としてしまいます。それを拾ったのが加賀鳶の頭・松蔵(梅玉)。様式美でみせるこの場面が後の物語に大きく影響していきます。場面は盲長屋へと移り、舞台にはどこか薄暗いじっとりとした空気が流れます。しばらくして、姪のお朝(男寅)の奉公先への強請を思いついた道玄は言いがかりをつけて金を出させようとしますが...。道玄が次第に図太い本性を現していく様子や、心地よい七五調のせりふ、闇のなかで探り合うユーモラスなだんまりなど、目にも耳にも楽しく、江戸の市井に生きる人々の息吹を感じる舞台に、芸術の秋を堪能できる初日となりました。

歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」初日開幕

 

 歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、10月31日(月)まで有名作家作品を集めた第4回「ねこ展~ねこ・猫・ネコ アート&グッズフェア」開催しています。大人気催事ですので、ご鑑賞のお帰りの際はぜひお立ち寄りください。

 

 歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」は27日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2022/10/07