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4年ぶりに浅草で幕を開けた「平成中村座」

 

 2022年10月5日(水)、浅草寺境内で、「平成中村座 十月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 令和元(2019)年「小倉城公演」以来3年ぶり、浅草寺での開催は4年ぶりとなる平成中村座。今年は、江戸歌舞伎の創始者、猿若(中村)勘三郎に由来する猿若町の発祥から180年の記念すべき年にあたり、コロナ禍にも負けず浅草を盛り上げます。

 第一部は、『双蝶々曲輪日記』「角力場」から始まります。幕が開くと、そこは幟はためく角力小屋の前。見物客で賑わいを見せるなか、小屋の中の取り組みでは、勘九郎勤める人気力士の濡髪長五郎が、虎之介勤める素人力士の放駒長吉に負ける番狂わせが起きます。取り組みを終えて対峙した二人でしたが、実は濡髪は自分の贔屓である新悟勤める山崎屋与五郎と、七之助勤める遊女の吾妻を結びつけるためにわざと勝ちを譲ったと長吉に伝えます。真実を知った長吉は、怒りをあらわにしますが…。意地と意地の張り合いがときに笑いを誘う、華やかなひと幕となりました。

 

 二幕目は、河竹黙阿弥の名作『幡随長兵衛』。芝居小屋で起きた喧嘩をきっかけに、もともと犬猿の仲であった、獅童勤める幡随院長兵衛と、勘九郎勤める水野十郎左衛門が、いよいよ決着のときを迎えようとしています。死を覚悟して水野の家に向かう長兵衛と、見送る家族や子分たちの悲壮な思いが、客席の涙を誘います。黙阿弥らしい七五調のせりふの応酬や、「湯殿の長兵衛」と呼ばれる立廻りも迫力満点。伊達男の生きざまに、万雷の拍手が送られました。

 第二部は、昭和31(1956)年に初演された、有吉佐和子作『綾の鼓』で幕が開きます。虎之介勤める三郎次は、鶴松勤める華姫に身分違いの恋をしていました。鳴るはずもない綾の鼓を鳴らすことができたら、望みをかなえてやると言う華姫に、三郎次は必死に打ち続けます。そんな姿に心を打たれた、扇雀勤める秋篠の助けを得て、ついに華姫の前で綾の鼓を鳴らすことができたとき…。純粋な心が交差する哀切が、清元の演奏にのって見事に表現されました。 

 

 続いて、浅草が舞台の古典落語「唐茄子屋政談」を題材とした、宮藤官九郎作・演出による新作歌舞伎『唐茄子屋~不思議国之若旦那』。吉原遊びが過ぎて、親に勘当された勘九郎勤める若旦那徳三郎は、吾妻橋から身投げしようとしていたところを、荒川良々勤める叔父・達磨町の八百八に救われます。唐茄子(かぼちゃ)売りを通じて、さまざまな人に出会う徳三郎。一癖も二癖もある登場人物に加え、蛙やあめんぼが現れる、不思議な世界が広がります。「不思議の国のアリス」の世界と江戸の生活が行き来する、笑いあり、涙ありの展開に、会場は釘付けになりました。

 

 「平成中村座 十月大歌舞伎」は、27日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2022/10/07