2022年10月25日（火）、令和4（2022）年度の文化勲章受章者が発表され、松本白鸚がその一人に選ばれました。

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役者は一生修行

　前年度までの文化功労者のなかから、文化の発達に関し特に優れた功績を納めた個人に授与される文化勲章。白鸚は、平成24（2012）年度文化功労者に選出されました。今回の文化勲章受章の発表を受けての会見で、白鸚は、「身に余る栄誉を浴しまして、びっくりいたしますのと、大変うれしく存じております」と、まずは率直な思いを口にします。「この栄誉は、私一人ではできませんでした。まずは、裏方の皆さんに感謝したいと思います。そして、共演してくださった諸先輩に感謝しています。宝物をくれました。同輩とは舞台の上で火花を散らし、芸の切磋琢磨をいたしました。後輩たちもたくさん育って参りまして、若手、一門の者に将来の歌舞伎を託していきたいと思います。そして、何よりも劇場へ足をお運びくださいましたお客様方に、本当にお礼を申し上げたいと思います」と、深謝の意を述べました。

　3歳で初舞台を踏み、80年近く役者として生きてきた白鸚。「自分の信条である、『役者は一生修行である』と、『一つひとつが勝負だ』を心に念じて、演じて参りました。自分の人生をもっているのは自分だけなので、責任をもって、この人生を生きようということは、舞台のたびに思います。今日こそ、明日こそもっと良い舞台を、という思いで毎日勤めております」と、明かします。

お客様に喜んでいただけるようなお芝居を

　白鸚は、好きな役として『勧進帳』の武蔵坊弁慶を挙げ、「笈を背負って最後に金剛杖を片手に六方で引っ込む。自分の人生そのものが入っているような気がします」と、話しました。白鸚が全国津々浦々巡って演じた、『勧進帳』の弁慶の1000回目となる公演は、東大寺の大仏殿前にしつらえた特設舞台での奉納大歌舞伎公演でした。その際、「大仏様の声で『人を喜ばせ、涙を流せることは容易ではない。まして感動を与えることは容易ではない。それをお前は仕事にしているんだ、心して励めよ』と、お言葉をいただきました。今日の日にふさわしいお言葉だと思います」と、神妙な面持ちで当時を振り返りました。

　今後について問われると、「お客様に喜んでいただけるようなお芝居を死ぬまで続けていきたいです。役者とはそういうものだと思っています」と、白鸚は決意を込め、会見を締めくくりました。