ニュース

鷹之資が語る、歌舞伎座『船弁慶』

鷹之資が語る、歌舞伎座『船弁慶』

 

 2023年2月2日(木)から始まる歌舞伎座「二月大歌舞伎」第二部『船弁慶』に出演の中村鷹之資が、公演に向けての思いを語りました。

 今回の歌舞伎座「二月大歌舞伎」では、五世中村富十郎十三回忌追善狂言として富十郎が当り役とした、新歌舞伎十八番の内『船弁慶』を上演し、息子の鷹之資が静御前と平知盛の霊を勤めます。「物心ついたときには(『船弁慶』が)父にとって特別なものと感じており、いずれは自分も勤めさせていただきたいという気持ちがありました」と、鷹之資。憧れの演目に初めて挑んだのは、昨年7月に行われた自身の勉強会「翔之會」でした。

 

鷹之資が語る、歌舞伎座『船弁慶』

 

一生をかけて自分の『船弁慶』を追求したい 

 「何がやりたいか聞かれたときに最初に思い浮かぶのが『船弁慶』でしたので、その作品に挑戦するのは自分のなかで一大決心でした。勉強会で勤めさせていただき、これをひと月できたら、どれだけいろんなことが分かり、幸せだろうと思いました。その作品を、こうして父の追善でひと月させていただけることが、ありがたく、うれしいです。1日1日を大切に、自分の『船弁慶』を深めていけたら」と、真摯に話します。

 

 『船弁慶』は前半では静御前の愁嘆を、後半では平知盛の霊の迫力を見せる、踊り分けが眼目の舞踊劇です。鷹之資は、「静の義経への愛を、洗練された動きのなかでいかに出すか、また、平家のすべての怨念を背負ったような知盛の陰の迫力も一朝一夕で出るものではありません。にじみ出るような魅力がこの作品の最たるものだと思いますが、父も、生涯演じていくなかでそれを追い求めていったのだと思います」と、それを実感するきっかけとなった出来事を明かします。

 

 「(『翔之會』の)お稽古で行き詰まったとき、夜中に父の映像を見ながら稽古をしていたのですが、ふと、父はここに至るまで、どれだけ長い年月をかけて、試行錯誤をしたのだろうと、その歳月や、父の思いに感動して、涙が止まらなくなってしまいました。一生修行だというのは、こういうことなんだなと。 だからこそ、自分も一生をかけてこの作品を突き詰めていき、いずれ、70、80歳になったときに、自分の『船弁慶』ができるようになっていたい。今回はその第一歩だと思っています」と、作品と向き合う覚悟を見せました。

 

鷹之資が語る、歌舞伎座『船弁慶』

 

父への感謝

 「直接父から『船弁慶』に関して教わることはありませんでしたが、(勉強会の際も)父の『船弁慶』に携わった方々がいろいろと教えてくださいました。周りの方々がそのように教えてくださるのは、父の人徳あってのことだと思いますし、僕はそれにずっと助けられているので、父が亡くなってからも見守ってくれているんだなと、ただただ感謝しかないですし、今も父に教えてもらっているように感じます」と、鷹之資は神妙な面持ちで語ります。

 

 勉強会では富十郎を担当していた床山から、父のこだわりについて聞いたと言い、「(細部への心配りは)試行錯誤した経験がなせる技だと思いますし、踊りだけでなく、父はすべてにおいて研究していた」と、実感したそう。今回の公演でも父が使っていた衣裳や小道具を身に着けます。「どれをとっても語り尽くせない(父の)思いがあり、衣裳や小道具を通しても繋がり、見守っていただいているように感じます。こうして父のものが残り、使わせていただけるのはとてもありがたいです。そういった繋がりや、皆さんの気持ちに力をいただいています」と感謝を表しました。

 

鷹之資が語る、歌舞伎座『船弁慶』

 

 また、父の尊敬するところを聞かれると、「父は常々基本に忠実であれと言っており、受け継いできたものを本当に丁寧にやっていました。この『船弁慶』は、特にそれが如実に出ている作品なのではないかと思います。父の芸に対する謙虚で真摯な姿勢は、父の姿を見て、子どもながらにひしひしと感じましたし、父は亡くなる最後の舞台まで、舞台に対しての謙虚さと真摯な気持ちをずっと持ち続けていた役者でした。それは今となって、いち役者として父の尊敬できるところです。そして、父はとても元気な人で、『船弁慶』の映像を見ても、なんでこんなに回れるのかと思うぐらい、熱い人でしたので(笑)ただただすごいと思いますし、そうしたところは受け継ぎ、負けたくないなと思います」と、笑顔で答えました。

 

 そして、『船弁慶』が今回第五期歌舞伎座で初めて上演されることに触れ、「『船弁慶』という作品が、こうしてまた、歌舞伎座の舞台にかかったことが、とてもうれしいです。父が紡いできたものを自分も受け継いで、そしてまた、この先に自分が繋いでいけるような、そういう役割でありたいと思います。父が愛して、僕も大好きな、この素晴らしい『船弁慶』という作品をぜひ観に来ていただければと思います」と、締めくくりました。

 歌舞伎座「二月大歌舞伎」は、2月2日(木)から25日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。 

2023/01/18