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幸四郎、隼人が語る、歌舞伎座『女殺油地獄』
2026年1月2日(金)から始まる歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」夜の部『女殺油地獄』に出演の松本幸四郎、中村隼人が、公演に向けての思いを語りました。
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1年の幕明けを飾る歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」夜の部では、『女殺油地獄』が上演され、河内屋与兵衛を幸四郎、隼人が日替わりのダブルキャストで勤めます。
本能のまま生きる男
平成25(2013)年に新開場した第五期歌舞伎座で『女殺油地獄』が上演されるのは、今回が初めてとなります。幸四郎は、「新しい歌舞伎座でも上演され続けていく、スタートにしなければいけないという責任を感じます」と、真摯に向き合います。
作品については、「たびたび勤めさせていただいていて、大好きな、思い入れのある作品です。演じる人、観る人によって、いろいろな解釈ができる、面白いお芝居。その時代ごとに受け入れられる作品だと思っています。今回はまた新たな与兵衛を勤めるというよりは、たくさん発見をして、作品に挑めれば」と、話します。
与兵衛という役柄については、「ただの‟人間”であり、『本能のまま生きられる男』と解釈しています。どこかに憧れがある、踏み込んではいけない世界に、一歩踏み込んでいる男」と、分析します。さらに、「何をやるにも100パーセント本気なんですよね。嘘をつくのにも本気。遊ぶときも本気。それがこの与兵衛だと思っていますので、精一杯勤めたいと思っています」と、意気込みを見せました。
憧れの役への挑戦
昨年の南座で初役として与兵衛を勤めた隼人。「こんなに早く再び勤めさせていただけるとは、思ってもみませんでした。(片岡)仁左衛門のおじ様(の与兵衛)はもちろんのこと、幸四郎兄さんが(平成13[2011]年に)ル テアトル銀座で公演なさった『女殺油地獄』を見て、いつか勤めたいと憧れをもちました」と、幸四郎とのダブルキャストへの喜びを明かしました。
「与兵衛は、複雑な家庭環境に育った、甘ったるい、でもプライドが高い男だと僕自身は思っています。どこか親には甘えたいけれど、甘えられない不器用な自分がいて、その不器用さや若さが、非情な事件を起こしてしまう。こういったところを、歌舞伎的な要素を大事にしつつも、お客様の心に届けられるように、今回は意識して勤めたいと思います」と、抱負を述べました。
仁左衛門からの教え
隼人は、「(仁左衛門の)おじ様に言っていただいたことのひとつが、お客様に嫌われてはいけないということ」だと、教えを振り返り、「おじ様の与兵衛は、借金をつくってきてもしょうがないなと思わせ、親に暴力を振るい勘当されても、寂しい表情を見て、“可愛いところもあるんだ”と思うような、憎めなさがあります。ただただ憎い人になってしまうとこの作品は成立しなくなってしまうので、憎まれない、どこか助けたくなる、手を差し伸べたくなるような与兵衛でいたいなと思います」と役への心構えを述べます。
幸四郎は、「『女殺油地獄』の河内屋与兵衛は、(仁左衛門の)おじ様ご自身がつくられたと言ってもいい」役だと話し、仁左衛門に初めて与兵衛を教わったときに、「何気ない格好でも素敵に見えるように分解して、研究して、緻密に与兵衛をつくり上げられてるんだなと感じました」と、振り返ります。そして、「おじ様にも、“自分なりの与兵衛がつくれれば”とおっしゃっていただいたことがありましたので、そこに行き着けることを恩返しと思い、今回もたくさん発見をして勤めたい」と、言葉に力を込めました。
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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」は、2026年1月2日(金)から25日(日)までの公演。チケットは、12月14日(日)からチケットWeb松竹、チケットホン松竹で発売予定です。
