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松緑が語る、歌舞伎座『丸橋忠弥』

 

 2025年12月4日(木)から始まる歌舞伎座「十二月大歌舞伎」昼の部『丸橋忠弥』に出演の尾上松緑が、公演へ向けての思いを語りました。

新しい『丸橋忠弥』

 このたび上演される『丸橋忠弥』は、明治3年(1870)年初演の河竹黙阿弥の作品。 浪人らが幕政の改革を目的に反乱を企てた「慶安の変」を題材にしています。松緑は「『丸橋忠弥』に前回出演したのは10年前。もともと(河竹)黙阿弥さんの台本ですが、立廻りを眼目としているうえに、二世(市川)左團次さんにあて書きをされ、その役者ぶりに注目する作品ゆえに、やや物語の流れに矛盾を感じる部分もありました。今回、講談シリーズでも演出をお願いしている西森英行さんに入っていただき、皆様に分かりやすいようにつくり直しながらも、黙阿弥さんのテイストは壊さないよう、いい意味で改変していきたいと思っています」と、このたびの上演への思いを明かします。

 

 「この10年の間に、私の好きな講談でも『慶安太平記』を聞いていましたが、講談に登場する丸橋忠弥は結構三枚目なんです。奥さんに怒られたり、仲間内からも‟あいつは頼りない”と言われたり…一方で、歌舞伎の『慶安太平記』では非常に頭の切れる男として描かれてる部分もあるので、丸橋忠弥という男のキャラクターを今回は切れ者として統一しようと思っています。その方が、作品の眼目でもある立廻りにも紐づくので。『蘭平物狂』と匹敵するような立廻りは、立師の山崎咲十郎さんとも相談をしながらつくっています」と、作品の構想にも触れます。

 

 

 「私自身、いわゆるピカレスク物が好きなんだと思います。丸橋忠弥という男は、どちらかというと悪者に分類される人なのでしょう。彼自身はそれが正義だと思ってやっているけれども、アンチヒーローとして表立って活躍をする作品という意味で私はとても好きです。世話物とは言いながらも、様式的な見得もあり、非常に男臭い作品ではあるので、その魅力は残しつつこれから稽古に入ろうと思っています」と、作品の魅力も語りました。

 

任せてよかったと言われる舞台を

 松竹創業130周年となる今年、一挙上演された歌舞伎三大名作に出演した松緑。公演を振り返って「3月の『仮名手本忠臣蔵』四段目の大星由良之助は、立役の頂点の役の一つ。怖さが先に立ちましたが、父(初世尾上辰之助)が由良之助をできなかったこともあり、これを経て、まだまだ続けたいと思う大きな役でした。9月の『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」松王丸は、今回初めて腹に落ちた部分もあり、今後も勤めさせていただく機会があれば、この9月の経験が自分のなかでベースになっていく気がします。10月『義経千本桜』のいがみの権太では、「すし屋」をやるにあたり、「木の実」からの経験が必要だと思っていたので、通しでやらせていただけて良かったです」と、語りました。

 

 12月を控え、早くも来年の抱負を問われた松緑は「千穐楽まできっちりといただいた役を無事に勤めていく。体力が続く限り、今月も松緑に役を任せてよかったと言っていただき、千穐楽を迎えられるように。それを続けていくことが自分の抱負です」と、締めくくりました。

 歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は12月4日(木)から26日(金)までの公演。チケットは11月14日(金)より、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2025/12/03