ニュース

幸四郎が語る、歌舞伎座『花の御所始末』、特別ポスターも公開

松本幸四郎

 

 2023年3月3日(金)から始まる歌舞伎座「三月大歌舞伎」第一部『花の御所始末』に出演の松本幸四郎が、公演に向けての思いを語りました。

 「三月大歌舞伎」では、昭和49(1974)年に帝国劇場初演の『花の御所始末』が40年ぶりに上演され、父・松本白鸚が勤めた足利義教に、幸四郎が初役で挑みます。“昭和の黙阿弥”と称される劇作家の宇野信夫が、シェイクスピアの『リチャード三世』から着想を得て、白鸚に向けて書き下ろし、かつて二度演じられたのみの伝説の舞台。幸四郎は、「お話をいただいたときは驚きました。父と宇野先生が、お互い持っているものをぶつけ合った作品だと思うので、その精神を大切にしながら、積極的に自分の『花の御所始末』にすることを目指したいです」と、気合を見せます。

 

幸四郎が語る歌舞伎座『花の御所始末』、特別ポスターも公開

 

貫き通す「悪」の強さ

 物語では、室町御所で将軍の座を狙って計略を巡らせる、足利義教が描かれます。「ここまで悪を貫き通すのは、お芝居としては独特。人々の業が発散されている、いい意味での問題作だと思っています。徹底的な悪を描いていますが、どこか、人間誰しもが持っている悪のようにも感じます。義教はただ天下を狙うだけでなく、その目的が何なのかわからないところが面白いですね。冷徹な、何をしても動じない強さが、怖さにつながるような人物になれば」と、役への思いを語ります。

 

 さらに「この作品は、映像資料が残っていませんので、音源と、舞台写真を頼りに舞台を復元しています。新作ではテーマ曲を一つつくるというのが私のこだわりなのですが、今回も新作のような気持ちで、新たに制作しています」と、上演への熱意をのぞかせます。「配役も、(初代坂東)楽善さんが演じられた足利義嗣を(坂東)亀蔵さん、(四世中村)雀右衛門さんが演じられた入江を当代の雀右衛門さんと、私を含めた3人が親と同じお役を演じます。巡り合わせを感じ、今、このお芝居をやる意味があると思います」。

 

ほかにない世界観の舞台を

 「父に上演を報告したところ、驚き、うれしさ、戸惑い、いろいろな思いがあるようでした。この作品は、世話物的なしゃべり方ではなく、シェイクスピア劇に近い。父の音楽的せりふ回しが活かされ、芝居の色が確立されていたことを感じています」。また、息子である市川染五郎の出演に対しても、「まずは音源から凝縮されたドラマ、緊張感を感じて役づくりをすることですね。昨年の『信康』同様、演出の齋藤(雅文)さんに抜き稽古をしていただいているので、左馬之助という役を深めていってほしい」と、期待を込めている様子がうかがえます。

 

 「“花の御所”には、四季の花、すべてが咲いているという設定です。前回の上演に比べて花の数や色彩も増え、豪華で美しい場面ばかりですが、そのなかで殺しが起きること、そんな現場でも変わらずに美しく花が咲いていることへのギャップ、両方の衝撃があると思います。ほかにない世界観がある、魅力的な作品だと思いますので、再演も目指したい」と、40年ぶりの上演に向けて意気込みをみせました。

歌舞伎座『花の御所始末』

 このたびは、「三月大歌舞伎」の特別ポスターも公開されました。将軍の正装である黒い直衣を身にまとった幸四郎が、漆黒の背景に浮かび上がり、鋭い眼差しをこちらに向けている姿が写し出されています。幸四郎は「今回は、荒木経惟さんに撮影をお願いしました。荒木さんとは、以前写真集を撮っていただいたご縁があり、作品そのものが脈打っていて、生きているかのような表現が芸術的だと感じていて。撮影時には、俺を殺すつもりで!と言われ、何度も挑戦しました」と、エピソードを明かしました。

 
幸四郎が語る歌舞伎座『花の御所始末』、特別ポスターも公開

 

 歌舞伎座「三月大歌舞伎」は、3月3日(金)から26日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2023/02/22