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芝翫が語る、歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』「天川屋義平内の場」
2023年3月3日(金)から始まる歌舞伎座「三月大歌舞伎」第二部『仮名手本忠臣蔵』十段目「天川屋義平内の場」に出演の中村芝翫が、公演に向けての思いを語りました。
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工夫を重ねて見せる、芝翫の天川屋義平
歌舞伎三大名作の一つ『仮名手本忠臣蔵』のなかで、上演が珍しい十段目。「九段目までの色濃いドラマから、討入りに対する助走のような場面です。忠臣蔵が敵を討ち果たすだけのドラマではなく、その周りにある背景や人情が、天川屋義平という人物の心意気や大きさのなかに描かれていると思います」と、まずは十段目に対する印象を語ります。
これまでさまざまなかたちで演じられてきた十段目ですが、「今までおやりになった方々の台本を照らし合わせて、今回は混成でやらせていただくことにしました。初代(市川)猿翁のおじ様の台本は派手で最後がとても素敵ですので、それを基に、前半は天王寺屋のお兄様(五世中村富十郎)と、八代目(坂東)三津五郎のおじ様のものを入り混ぜた形で、面白くつくっていけたら」と、芝翫ならではの十段目の構想を語ります。
初役で演じる義平について、「男のなかの男」と表現する芝翫。「脂ののった男の天川屋義平と大星由良之助が対峙するという点が、このお芝居の最大の見せ場だと思っています」と語ります。今回は荒磯の衣裳を着用すると言い、「男らしさが出て、義平の心意気がすきっとしたところを出すのに良いのではないかと思いました」と、細部にまで工夫を凝らします。また、「天川屋義平は男でござる、という胸のすくような有名なせりふがございますので、少しでもお客様に伝わるように、討入りへのドキドキやワクワクを味わっていただけたらうれしいです」と、思いを口にしました。
当時の庶民の心根を現代のお客様へ
「忠臣蔵ほど何百通りものやり方がある作品も珍しいと思います。今回の十段目も柔軟に、お相手の(片岡)孝太郎さんや、浪士の(中村)松江さん、坂東亀蔵さん、(中村)福之助、(中村)歌之助にも、それぞれに工夫を入れていただき、チームでつくる作品にしたいと思っています」と語ります。ドラマの中心は「やはりおそのとの夫婦の情愛、家族との繋がり」と述べ、「そうした当時の心根をどう現代のお客様にお伝えするか。一方で、歌舞伎ならではのばかばかしさといいますか、終わった後に心がすっとするような作品になったら」と、ドラマ性とエンタテインメント性の塩梅を探っている様子です。
3月は第一部で『花の御所始末』にも出演する芝翫。「部をまたいで『花の御所始末』と十段目に出演し、長い時間どっぷりと歌舞伎座で芝居ができることがとてもうれしいですし、アイディアマンの(松本)幸四郎さんとお芝居をするのが楽しみです」と、笑顔。また、十段目で共演する福之助、歌之助、そしてIHIステージアラウンド東京で木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』に出演する中村橋之助と、それぞれが活躍の場を広げている息子たちに対して、「毛利元就の3本の矢のように、三人が力を合わせて、諸先輩方に習いながら、現代にそぐう歌舞伎役者として胸を張ってやっていってほしい」と、親心をのぞかせるひと幕も見られました。
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歌舞伎座「三月大歌舞伎」は、3月3日(金)から26日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。