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團十郎が語る「十三代目 市川團十郎白猿襲名披露巡業」

團十郎が語る「十三代目 市川團十郎白猿襲名披露巡業」

 

 2023年10月13日(金)から全国20会場で行われる、「十三代目 市川團十郎白猿襲名披露巡業」に出演する市川團十郎が、公演について語りました。

市川團十郎として

 昨年11月の歌舞伎座公演を皮切りに、各地での襲名披露興行の最中である團十郎。これから博多、京都、名古屋、大阪とまわり、そして巡業では、全国各地の公演が予定されています。「各地にうかがい、團十郎襲名のご挨拶をする興行が続いておりますが、海老蔵さんと声をかけられることのほうが多いくらい」と、冗談めかして語り、「團十郎として生きることについては、まだ難しさを感じており、模索中でもあります」と、素直な心境を口にしました。

 

 上演する『毛抜』については、「歌舞伎十八番というと、荒事の印象があるかもしれませんが、この作品では主人公が奮闘して動いて、ミステリーを解き、お家騒動を解決していきます。おおらかに、明るく、真面目に考える部分もありますが、それをお客様には感じさせずに勤めるところが『毛抜』のいいところかな」と、みどころに触れます。

 

 おおらかさを大切に

 「『毛抜』は、もともと『雷神不動北山櫻』という作品の三幕目にあたる場面で、歌舞伎十八番に制定されたものの一つですが、その形は途絶え、それを『鳴神』とともに二世市川左團次が復活させた作品です。その後、十一世團十郎が現在の形の『毛抜』を初演し、(市川)新之助も含めると四代以上が携わっており、今ではこれがうちの型となっています。十一世、十二世團十郎が演じるなかで確立された、愛嬌とおおらかさ、ひけらかさない知的な強さ、そのなかにある歌舞伎十八番の剛の者というエッセンスがすべて必要なのが粂寺弾正だと感じていて、歌舞伎十八番でも、少しだけハードルの高い演目の一つだと思っています」と、その難しさも説明します。

 

 昨年12月の歌舞伎座公演では、新之助も同作品へ出演。「倅が9歳で演じるには非常に難易度の高い作品でしたが、彼がもっている、十二世團十郎に通じるおおらかさを感じて挑戦させました。もちろん、こうしなさい、と指導すべき部分はありますが、今はさまざまな場面で生まれる才能が認められる、多様性のある世の中。親として、時代の変化も感じなくてはと思っています。少し先を見て教育している認識をもち、あえて口酸っぱく言わないことに気をつけて指導しました」と、育て方への信念が感じられます。

 

気持ちを伝える公演を

 巡業先となる各地の印象について質問を受けた團十郎は、公演地の一つである松本市について、「環境問題への対策として(志賀高原で)植樹をさせていただいており、長野県にはコロナ禍の年以外、毎年必ず足を運んでいます。松本市と言えば、(十八世中村)勘三郎お兄さんが歌舞伎公演を定着させた土地。今も勘九郎さん、七之助さんたちが強い思いをもって公演をされています。かわいがっていただいた一人として、松本にお邪魔すると、お兄さんのことを思いながら舞台に立つ自分がいます」と、その縁を語るひと幕も。

 

 「これまでも旅巡業には力を注いできており、襲名披露興行のみならず、『古典への誘い』などの公演で、各地に足を運んでまいりました。なかなか劇場に行くことが難しいという方々にも、今回は團十郎としてご挨拶にうかがい、“今後ともよろしくお願いいたします”、“今まで海老蔵としてありがとうございました”、という両方の気持ちを伝えられる興行になったらいいな」と、各地の公演への期待をにじませ、締めくくりました。

 「十三代目 市川團十郎白猿襲名披露巡業」は10月13日(金)から11月12日(日)まで、全国20会場で開催。チケットの詳細は公演情報のお問い合わせでご確認ください。

 

2023/08/30