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團十郎が語る、歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」

團十郎が語る、歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」

 

 2024年5月2日(木)から始まる歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」に出演する市川團十郎が、公演に向けての思いを語りました。

幡随院長兵衛のもつ男の美学

 昼の部『極付幡随長兵衛』の幡随院長兵衛を初めて演じたのは、平成25(2013)年の「新春浅草歌舞伎」で、長兵衛は同年に亡くなった父・十二世團十郎から最後に教わった役であることを明かした團十郎。「稽古の様子を撮って、病室にいた父にDVDを送って見てもらいました。父は手紙に、私の幡随院長兵衛への思いや、構成についての話を丁寧に綴ってくれました。あまり褒めることをしない父でしたが、手紙には珍しく“悪くないのではないか”と…。父が「悪くない」と思ってくれたように今回も勤められるよう、頑張りたいと思います」と、大切な思い出とともに決意を語ります。

 

 その長兵衛を演じるにあたり、「(子別れの場面で)死の覚悟をもって家を出る、あのときの長兵衛は、孤高の精神を表現しています。周りの人間にはわからない、孤高の思考や覚悟を意識してお客様にお届けしたいと思っています」と、役柄を読み解きます。「現在徐々に薄れてきている、男の美学や覚悟というものの結晶が長兵衛なのではないかと感じます。男性にも観にきていただきたいですね」と、力強く意気込みました。

 

團十郎が語る、歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」

 

品格ある敵役、仁木弾正

 夜の部『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』では「床下」の仁木弾正を勤めます。「敵役のなかでも、最上級の品格を有する役柄の一つです。今回のように(“対決”“刃傷”が上演されない)“床下”だけの上演時間のなかで、その存在を示すのはかなり大変だと思います」と話し、「江戸時代と令和で、仁木弾正に対する悪の価値観が異なると思いますが、江戸の文化として在る作品ですから、前者の方向で演じます。でもお客様も演じる人間も“今”を生きているので、その感覚もどこかにもっていないといけないのではないでしょうか」と、演じるうえでの解釈を述べました。

 

 團菊祭について、「昔は、父たちと一緒に出演して歌舞伎を勉強する場でした」と振り返り、楽しかったと懐かしげに目を細めます。「今は責任をもって、我々の世代がしっかりと團菊祭を盛り立てていきたいと思っています。(尾上)松緑さんも(尾上)菊之助さんも、子どものときから一緒に過ごしてきた仲です。各々背負うものやそれぞれの考え方をもちながら、歌舞伎のために何ができるのかを考えられるような仲間でありたいと思います」と、ともに歌舞伎を背負う同世代の仲間への思いをにじませました。

 

古典と新しさと

 今年の秋で襲名興行もひと区切りを迎えます。「古典の作品をきちんと勤めていくことが、歌舞伎にとって一番重要であるという点はぶれません」と、古典へのゆるぎない気持ちも表しつつ、一方で、「今、(自身の周りで)新しいと言われているようなことは、実は新しくないのではと感じ始めてもいます。客観的に新しいことを見つけて動き出し、何か歌舞伎界のお役に立てるような形をつくっていきたいと思っています」と、これからを見据えた志を明かしました。

 

 また、このたびの團菊祭では、四世市川左團次の追善狂言として上演される昼の部の『毛抜』で、左團次の息子の市川男女蔵が粂寺弾正を、そして團十郎が後見を勤めます。「四代目左團次さんは、表も裏もない、あのままの方。市川宗家のためにあるべき姿を考えてくださり、父が旅立った後も変わらず接してくださいました。ご恩をしっかり返せるよう、男女蔵さんのそばで、左團次さんへの感謝とともに、私ができる範囲のことをやっていきたいという気持ちです」と、心境を伝えました。

 歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」は5月2日(木)から26日(日)までの公演。チケットは4月14日(日)から、チケットWeb松竹チケットホン松竹で発売予定です。

2024/04/12