ニュース
歌舞伎座「七月大歌舞伎」初日開幕

2025年7月5日(土)、歌舞伎座「七月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。
▼

▲ 『大森彦七』市川右團次
昼の部は、九世市川團十郎が制定した「新歌舞伎十八番」を、これまでに例のない4演目一挙上演でお楽しみいただきます。まずは26年ぶりの上演となる『大森彦七』から。舞台は南北朝時代、楠正成を討ち取った武将・大森彦七(右團次)に、父の仇と斬りかかる正成の息女・千早姫(廣松)。組み伏せた彦七が正成の潔い最期を語る場面は、観客もぐっと引き込まれます。父の形見の菊水の宝剣を渡し千早姫を逃がす彦七は、その正体を怪しむ道後左衛門(九團次)に、宝剣は正成の怨霊に奪われたと紛らわします。そして彦七が馬に乗り豪快に花道へ引っ込むと、客席からは大きな拍手が送られました。

▲ 『船弁慶』市川團十郎
続いて『船弁慶』。兄の頼朝に謀反の嫌疑をかけられ、都を追われた源義経(虎之介)は、愛妾・静御前(團十郎)に都へ帰るようにと告げ、静は悲しみを堪えて舞を舞います。都の名所の四季の移ろいを描く舞は、そのしなやかな所作一つひとつに義経への思いがあふれ、観客は思わず釘付けに。やがて、舟長三保太夫(梅玉)が舟人(巳之助・中村福之助)とともに住吉踊りを披露し船出を祝いますが、船出後、花道から平知盛の霊(團十郎/2役目)が現れ、平家を滅ばされた恨みを晴らそうと凄まじい勢いで義経一行に迫ります。大きな長刀を華麗に振りかざす姿に場内の熱気も高まり、万雷の拍手が響き渡りました。

▲ 『高時』坂東巳之助
そして『高時』と続きます。北条高時(巳之助)は犬を偏愛し、愛犬を斬った安達三郎(中村福之助)に死罪を命じる横暴さを見せます。愛妾衣笠(笑三郎)の酌で飲んでいると、突如雷鳴が響き渡り、天狗たちが現れて…。天狗にたぶらかされて田楽舞に興じる「天狗舞」での、軽妙でダイナミックな巳之助の様子が客席を沸かせます。幕切れには片方の肩を落とした美しい姿で決まり、幻想的な世界観が観客を魅了しました。

▲ 『紅葉狩』左より、市川團十郎、松本幸四郎
昼の部最後は『紅葉狩』。幕が開くと、紅葉が美しい戸隠山が広がります。平維茂(幸四郎)が従者を伴い紅葉狩に訪れると、ひと足先に宴をしている美しい更科姫(團十郎)の一行に誘われ、酒を酌み交わします。侍女・野菊(ぼたん)をはじめ、更科姫が艶やかな舞を披露すると、酒の酔いもあり寝入ってしまう維茂。そこへ現れた山神(新之助)に、更科姫の真の正体を告げられ…。團十郎、ぼたん、新之助の成田屋親子の共演と、後半披露される鬼女(團十郎/2役目)と維茂によるダイナミックな立廻りに大きな拍手が送られました。
◇

▲ 『鬼平犯科帳』左より、市川團十郎、松本幸四郎
夜の部は、池波正太郎が生み出した傑作を題材とした『鬼平犯科帳』から。深夜の江戸に現れた盗賊集団。改方の密偵を勤める相模の彦十(又五郎)の呼子笛の音を合図に、火付盗賊改方長官の長谷川平蔵(幸四郎)が登場すると、「高麗屋!」の大向うとともに大きな拍手が響き渡ります。そこへ自ら名のりを上げて平蔵に挑むのは、頭目の普賢の獅子蔵(團十郎)。豪華共演で魅せる迫力あふれる立廻りに、客席の熱気は一気に高まり、物語の世界へと引き込まれます。

▲ 『鬼平犯科帳』左より、市川染五郎、松本白鸚、松本幸四郎
時は遡り、若き日の鬼平・長谷川銕三郎(染五郎)と、幼馴染・おまさ(ぼたん)が登場。二人のやり取りは若さに満ちあふれ、舞台を華やかに彩ります。そして鬼平の父・長谷川宣雄(白鸚)が、月に照らされながら自らの夢を託す場面は観客の心を打ち、高麗屋三代の共演に割れんばかりの拍手が送られます。平蔵の前に立ちはだかる剣豪の日置玄蕃を巳之助、成長したおまさを新悟が勤めるなど、みどころ満載の舞台に客席は大盛り上がり。また、平蔵の妻・久栄を雀右衛門が勤めるのをはじめ、中車がテレビシリーズと同役を勤めるなど、随所に二世中村吉右衛門の面影を感じさせる、新たな『鬼平犯科帳』の誕生に、惜しみない拍手が送られました。

▲ 『蝶の道行』左より、市川團子、市川染五郎
夜の部の幕切れは『蝶の道行』。儚く世を去った助国(染五郎)、小槇(團子)の魂は番いの蝶に乗り移り、在りし日の姿で現れます。馴れ初めを恥ずかしそうに語り合い、仲睦まじく踊る二人ですが…。衣裳が変わるたびに客席からは思わずため息が漏れます。二人の姿に魅せられ、鳴りやまない拍手のなか幕となりました。

歌舞伎座地下2階の木挽町広場(かおみせ)では、7月期間限定で老舗店の銘菓を特別販売いたします。
歌舞伎座「七月大歌舞伎」は26日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。