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歌舞伎座「三月大歌舞伎」の賑わい
2026年3月5日(木)、歌舞伎座「三月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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▲ 『加賀見山再岩藤』(Bプロ)尾上松緑
▲ 『加賀見山再岩藤』(Aプロ)左より、中村時蔵、坂東巳之助
昼の部は、歌舞伎座では13年ぶりの通し上演となる『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』です。初日のAプロでは、坂東巳之助が岩藤の亡霊と鳥井又助の2役を演じました。物語は加賀藩の御家騒動を題材にした名作『鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』で描かれたかつての御家騒動から数年後、当主・多賀大領(七代目菊五郎)は、側室・お柳の方(扇雀)に心を奪われるている様子。舞台は多賀家下館より始まります。執権・望月弾正(芝翫)らの陰謀によって御家には不穏な空気が漂います。八丁畷三昧の場では、かつてお初に討たれた岩藤の執念が白骨を呼び寄せ、岩藤の亡霊(Aプロ:巳之助/Bプロ:松緑)として現れます。ケレン味あふれる怪奇的な演出に、客席からはどよめきが起こりました。
▲ 『加賀見山再岩藤』(Bプロ)左より、尾上松緑、中村又五郎
▲ 『加賀見山再岩藤』(Aプロ)左より、中村莟玉、中村種太郎、坂東巳之助、中村又五郎、中村萬太郎
ところ変わって桜満開の春山。桜の花びらが舞い散るなか、美しくどこか怪しげな笑みを浮かべながら岩藤が宙乗りを披露すると、場内は華やかな空気に包まれます。その後多賀家の奥殿へ姿を現し、かつてのお初であり今は家を支える二代目尾上(Aプロ:時蔵/Bプロ:萬壽)を草履で打ち据える草履打ちの場面と続きます。憎々しさをはらむ冷徹な表情を浮かべる岩藤と、凛とした気品をたたえ耐え忍ぶ二代目尾上の姿の対比に黙阿弥らしい様式美が漂い、観客をぐっと引き込みました。
▲ 『加賀見山再岩藤』(Bプロ)左より、中村萬壽、七代目尾上菊五郎
四幕目では、主君・花房求女(萬太郎)への忠義ゆえに誤って正室・梅の方(新悟)を殺めてしまう鳥井又助(Aプロ:巳之助/Bプロ:松緑)の悲劇が描かれます。盲目の弟・志賀市(種太郎)が奏でる琴を背に、又助が壮絶な切腹を遂げる幕切れには、場内からもすすり泣く声が。大詰は再び多賀家下館の奥庭。岩藤の怨念を退け、悪人たちが裁かれるなか、多賀大領によって御家の騒動は収まり晴れやかな大団円を迎えます。通し上演ならではの壮大な物語を堪能した観客から盛大な拍手が送られました。
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▲ 『壽春鳳凰祭』左より、中村雀右衛門、中村梅玉、中村魁春
夜の部は『壽春鳳凰祭(いわうはるこびきのにぎわい)』から。幕が開くと宮中の庭園。艶やかな女御や貫禄ある大臣が登場し舞台が明るくなると、中国の故事を織り込んだ長唄に合わせ若い大臣や女御が手踊りを披露し、より一層華やぎます。やがて宮中深くの御内庭と移り、帝(梅玉)とふたりの女御(魁春、雀右衛門)が現れると、その華やかさに観客は思わず魅了されます。天下泰平と歌舞伎の発展を願う総踊りが披露されると、客席は春が訪れたような高揚感に包まれました。
▲ 『三人吉三巴白浪』(Aプロ)左より、中村時蔵、尾上松緑、中村隼人
▲ 『三人吉三巴白浪』(Aプロ)左より、市川染五郎、尾上左近、尾上松緑
続いては河竹黙阿弥の代表作のひとつ、『三人吉三巴白浪』の通し上演です。初日のAプロでは尾上松緑が和尚吉三を演じました。物語は、女に化けて盗みを働くお嬢吉三(時蔵)が、夜鷹のおとせ(左近)から100両の金を奪い取る場面から始まります。お嬢が黙阿弥独特の七五調の名ぜりふを披露すると、心地よい響きが観客を一気に作品の世界へと引き込みます。その様子を見ていた御家人崩れの悪党、お坊吉三(隼人)が駕籠の中から現れ、お嬢吉三と100両の金を巡って争うなか、二人の仲裁に入ったのは、吉祥院の所化あがりの盗賊・和尚吉三(Aプロ:松緑/Bプロ:巳之助)。和尚の取りなしにより、同じ吉三の名を名のる縁から義兄弟の契りを結びます。
▲ 『三人吉三巴白浪』(Bプロ)左より、市川染五郎、坂東巳之助、尾上左近
▲ 『三人吉三巴白浪』(Bプロ)左より、中村時蔵、坂東巳之助、中村隼人
一方、和尚・おとせの父である土左衛門伝吉(歌六)は、おとせの行方を探すうち、自分がかくまっていた十三郎(染五郎)が、かつて忌み子と捨てた、おとせと双子の兄妹だと気づきます。しかしふたりは互いに惹かれ合っていて…。やがて和尚もこの事実を知り、ある覚悟を決めます。そして数々の悪事を重ね、追われる身となった和尚吉三、お嬢吉三、お坊吉三はいよいよ追い詰められます。降りしきる雪のなか、覚悟を決めて立廻る姿が観客の心を掴み、万雷の拍手が送られながら幕を閉じました。
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また今月は、キャラクタービジュアルや紗久楽さわ氏描きおろし特別イラストが劇場の外にも掲示され、公演を華やかに彩ります。
歌舞伎座地下2階の木挽町広場では第11回「ねこ展」
歌舞伎座「三月大歌舞伎」は、26日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。
