歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

私と歌舞伎座 〜劇場に、人生の全てがある

 建て替えを前に、現在の歌舞伎座についての思い出を伺いました。

 「現在の歌舞伎座は東京大空襲の後建て替えられ、昭和26年に興行を再開しました。私の初舞台が昭和28年ですから、これまでの俳優人生のほとんどが詰まった劇場です。歌舞伎の歴史の中でも、現在舞台に出ている先輩たちと僕たちの世代が一番、今の歌舞伎座とは付き合いが長いんですよ」

  幼い頃に三階の大部屋で稽古をしたこと、青年期に楽屋で先輩に叱られたこと…。十二代目市川團十郎が芸に生き、芸と向き合ってきた時間を眺めてきた歌舞伎座。

 「子供の頃は小道具の部屋が大好きでした。刀や十手とか、いろんなものがありますから楽しくって。そしてなによりも舞台からの眺めが大好きです。太い梁が渡された天井のデザインや、一階席の桟敷のバランス。この劇場に詰まっている歌舞伎の魂を、新たな歌舞伎座にも満たしていきたいと思っています」

 

十二代目市川團十郎

1946年生まれ。7歳で歌舞伎座『大徳寺』の三法師公にて市川夏雄を名乗り初舞台。23歳の時、歌舞伎座『助六由縁江戸桜』の助六、『勧進帳』の富樫を勤め、十代目市川海老蔵を襲名。1985年、38歳で歌舞伎座の3ヶ月にわたる襲名披露で十二代目市川團十郎を襲名する。
家の芸である歌舞伎十八番を継承し『暫』、『外郎売』、『矢の根』といった演目で、スケール感のある骨太の芸を披露。『勧進帳』の弁慶、『雷神不動北山桜』の鳴神上人など荒事の当たり役はもちろん、義太夫狂言『義経千本桜』の平知盛では時代物の豪快さを、世話物の『与話情浮名横櫛』では庶民気質の中にも高潔な品格が漂う与三郎を演じ観客を魅了している。日本芸術院賞、真山青果大賞をはじめ受賞歴多数。2007年3月のパリ・オペラ座公演、2009年1月国立劇場での復活狂言『象引』など、伝統を踏まえながら歌舞伎の新たな魅力を精力的に伝え続けている。
 


私と歌舞伎座

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