歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



右から、菊五郎さん、大河さん、松緑さん
歌舞伎座さよなら公演芸術祭十月大歌舞伎 平成21年10月1日(木)〜25日(日)
上演時間
演目と配役
みどころ
 

未来に引き渡すもの
 〜藤間大河さん 初お目見得に寄せて

 10月公演昼の部では菊五郎さんはもちろん、中村富十郎さん、中村吉右衛門さん、澤村田之助さん、中村魁春さんといった豪華な顔ぶれが揃う『音羽嶽だんまり』で尾上松緑さんの長男・大河さんが初お目見得をします。いまの歌舞伎座でお目見得をと勧めたのは菊五郎さんでした。
 「3歳なので舞台に出るにはちょっと小さいのですが、新しい歌舞伎座が完成するまでの間、お客様にしっかり顔を覚えていただきたいと思いましてね。きっと本人は歌舞伎座でお目見得したことは忘れてしまうかもしれませんが(笑)。私は松緑の親代わりとして、孫が舞台に立つような嬉しい気持ちです」
 柔らかな表情の菊五郎さんは、記念撮影のために大河さんがやってくると「こっちおいで」と実の祖父のような破顔になりました。
 「今回の初お目見得は歌舞伎役者がまたひとり増える、特に私にとっては菊五郎劇団にひとり役者が増えるわけですから、新しい劇場が完成したら初舞台をして、演目は何がいいかと今からワクワクします。実は今回の初お目見得でわかったのは『祖父は気楽』ということ(笑)。父親は、とにかく共演してくださる皆さんに迷惑がかからないように、無事に最後まで舞台にいられますようにと神経がピリピリし通しですが、祖父の立場だと責任がないから純粋に楽しいものですね。菊之助の初舞台で私が緊張する一方、平然とニコニコしていた父、梅幸の姿が眼に浮かびます」
 これまでの菊五郎さんの俳優人生で、3歳の大河さんは初お目見得の舞台では最年少の共演者となります。
 「初お目見得は子供にとってハードな一ヶ月になります。初めて顔をして衣裳をつけ、共演してくださる方々の楽屋をいくつも回って挨拶して…。でもそれで歌舞伎が嫌になってしまったら困りますからね(笑)。できることをきちんとできるように、お客様に喜んでいただいて、本人も楽しく舞台に出られるように支えていきたいです」
 「とにかく小さくて」と嬉しそうに語る菊五郎さん。賑々しい初お目見得のために選んだのは昭和10年3月に歌舞伎座で行われた五代目菊五郎の三十三回忌追善興行のために書き下ろされた『音羽嶽だんまり』です。
 「立役、二枚目、道化、若衆、花魁といった一座の顔ぶれが揃う華やかな一幕です。今回は大河君の初お目見得であることを考えて台本を練り直しました。現在の歌舞伎を支える面々と、新しいピカピカの歌舞伎俳優とでお客様に歌舞伎の美しさと豪快さを感じていただける趣向にしますので、楽しみにしていてください」
 

私と歌舞伎座

バックナンバー