
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。

――2年ぶりの浅草歌舞伎。今回は第2部で『仮名手本忠臣蔵』「五段目・六段目」の勘平という大役に初挑戦されます。松也さんが所属される尾上菊五郎劇団では上演機会の多い芝居で、お父様の(六世尾上)松助さんは源六役を得意にされていましたね。
役の少ない芝居ですので私はまだ出演したことはありませんが、よく見ていました。拝見することの多かった七代目のお兄さん(菊五郎)の勘平が目にも、耳にも残っています。子どもの頃から好きな芝居で、せりふをまねしたりしておりました。
――勘平は憧れの役でしたか。菊五郎劇団では五世菊五郎以来、代々が大切に受け継いできた役ですね。
十代から二十代前半にかけて女方を勉強させていただいたので、最初はどちらかというとおかるに興味があり、「六段目・七段目」のおかるをやりたいなと思っていました。最近は立役中心になってまいりましたので、勘平に憧れていました。ですが、こんなに早く演じる機会が来るとは思ってもいませんでした。菊五郎のお兄さんにご指導いただきます。
外から拝見し、映像で見ておおまかな動きはわかっていますが、芝居にはやってみないとわからない細かな動きがたくさんあります。それを七代目のお兄さんに教えていただけるのはありがたい。ご指導からすべてが始まります。30歳を前にして勘平に挑戦できること自体が夢のようです。
――「三十になるやならずで」とおかるに言われる勘平の年齢に近いですね。「五段目・六段目」、ないしは勘平のどこに魅力を感じられますか。
『忠臣蔵』のストーリー自体に日本人の心を揺さぶるものがあります。勘平には武士として家臣としての思いがある。与市兵衛の一家は娘のおかるを売ってでも、そんな勘平の願いを達してやりたいと思っていた。ところが、めぐり合わせから悲劇が起きてしまいます。
舞台をご覧になっているお客様は、勘平は何も悪いことはしていない、殺したのは定九郎だとご存じです。「もうちょっと早ければ」というもどかしさを常に観客に与えるような描写が、面白いところではないでしょうか。ですので、お客様を、「勘平を何とかしてあげたいな」という感覚にできたら正解かなと思います。
そして、勘平はおかると人生を賭けた恋をしている。そこもおかるを演じる児太郎君と表現できたらと思います。
――「五段目」では「六段目」に至る伏線が張られています。
千崎と出会って連判に加われるかもしれないという希望が見えるけれど、結果的には悲劇に向かって行く序章でしかなかった。「五段目」があることで、より勘平の悲劇性が浮き彫りになるのかなという気がします。
平成25年
12月 | 「十二月大歌舞伎 仮名手本忠臣蔵」(歌舞伎座) 『仮名手本忠臣蔵』「四段目」「七段目」「十一段目」竹森喜多八 |
平成26年
1月 | 平成26年初春歌舞伎公演「通し狂言 三千両初春駒曳」(国立劇場) 『三千両初春駒曳』漁師網作実は小田家家臣小早川采女 |
2月 | 「二月花形歌舞伎」(歌舞伎座) 『心謎解色糸』山住五平太 |
3月 | 「三月花形歌舞伎」(京都四條南座) 『吹雪峠』助蔵/『素襖落』次郎冠者/『御摂勧進帳』「暫」音羽丸/『京鹿子娘道成寺』所化 |
4月 | 「第三十回記念 四国こんぴら歌舞伎大芝居」<旧金毘羅大芝居(金丸座)> 『菅原伝授手習鑑』「加茂堤」「車引」舎人桜丸/「寺子屋」武部源蔵/『女殺油地獄』豊嶋屋七左衛門 |
6月 | 渋谷・コクーン歌舞伎第十四弾「三人吉三」(Bunkamuraシアターコクーン) 『三人吉三』お坊吉三 |
7月 | 信州・まつもと大歌舞伎「三人吉三」(まつもと市民芸術館) 『三人吉三』お坊吉三 |
7月 | 尾上松也/新傾龍(SinKaRon)Vol.1「ハナガタミ」?能曲『花筐(はながたみ)』より?(マウントレーニアホール) 『ハナガタミ』テルアキ |
8月 | 「挑む?熱き役者の新たな軌跡?」(日本橋劇場 自主公演) 「口上」/『双蝶々曲輪日記』「引窓」南与兵衛後に南方十次兵衛/『お祭り』鳶頭龍吉 |
9月 | 「舟木一夫特別公演」(新橋演舞場) 『―天一坊秘聞―「八百万石に挑む男」』天一坊 |
11月 | ミュージカル「スリル・ミー」(天王洲 銀河劇場) 『スリル・ミー』私 |
12月 | 「十二月大歌舞伎」 『幻武蔵』小刑部明神/『雷神不動北山櫻』小野春風 |

撮影:永石 勝
二代目 尾上松也
(おのえ まつや)
生まれ | 昭和60年1月30日、東京都生まれ。 |
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家族 | 六代目尾上松助の長男。 |
初舞台 | 平成2年5月歌舞伎座『伽羅先代萩』足利鶴千代で二代目尾上松也を名のり初舞台。 |
ようこそ浅草へ
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ようこそ浅草へ「新春浅草歌舞伎」、三年目の挑戦 後篇
若手の登竜門といわれる「新春浅草歌舞伎」は、芝居に対する“熱”はどこの劇場にも負けないと、毎年、新鮮な舞台を見せています。でも、それだけではありません。中心となる出演俳優が一気に世代交代して3年目の今回は「ステップアップした私たちをご覧いただけるように」と、それぞれが強い気持ちで挑みます。後篇も公開!
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ようこそ浅草へ「新春浅草歌舞伎」、三年目の挑戦 前篇
若手の登竜門といわれる「新春浅草歌舞伎」は、芝居に対する“熱”はどこの劇場にも負けないと、毎年、新鮮な舞台を見せています。でも、それだけではありません。中心となる出演俳優が一気に世代交代して3年目の今回は「ステップアップした私たちをご覧いただけるように」と、それぞれが強い気持ちで挑みます。
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ようこそ浅草へ――後編
自分たちが新しい浅草歌舞伎の幕を開ける! 熱意を舞台にぶつけ、一人でも多くのお客様に楽しんでいただきたいと奮闘する三人が、演じる役のことを語る後編です。