
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。

――巳之助さんは『仮名手本忠臣蔵』では、「五段目」の斧定九郎に初挑戦されます。印象的な役ですが、どんな思いをお持ちですか。
この年でやらせていただけるのは非常にありがたいし、うれしいです。ですが、先輩方にうかがうと、皆さん難しい役だとおっしゃいます。長時間一人きりで舞台にいて、しかも拍手喝采を受けて登場したり、引っ込んだりするような役ではない。いかに落ち着いて淡々と自分を大きく見せるか…。父(坂東三津五郎)も演じたことがないので、(市川)團蔵さんに教えていただきます。
――せりふは与市兵衛から奪った小判を数える「五十両」だけですが、勘平に鉄砲で撃たれて、口から血を流して倒れるところなど、細かい仕事が多いように思います。
いろいろ心得がありますが、そこにばかり気を取られていると気持ちが途切れてしまい、演じている自分が段々恥ずかしくなってくる、というのは経験された先輩方に共通したご意見です。ずっとお客様の視線を集め続けはしますが、定九郎は突然に特に理由もなく出てきます。冷めた目で見れば、ドラマを動かす舞台装置のような存在でしょう。お客様に納得していただけるような説得力が必要です。
――説得力を持つためには、どのようなことが必要なのでしょうか。
芝居のしどころや、感情の起伏があれば、こちらにも、なんとかしようがありますが、定九郎にはそれがありません。見た目の格好よさ、芸の力以外では、お客様にあの長い時間を過ごしていただくことはできない。そこが難しさだと思います。
血を垂らすのも口伝がありますが、それはあくまでも演じ手の側のことです。浅草歌舞伎には初めて歌舞伎をご覧になるようなお客様もたくさんいらっしゃる。そこはあまり気にせずに、純粋に観て楽しんでいただくのが一番だと思います。
――第2部では最後の『俄獅子』にも鳶頭で出演されます。
「五段目・六段目」の松也兄さんの勘平で涙した後、新春ですのでお客様には明るい気持で帰っていただきたい。『俄獅子』で場内をぱっと明るくしたいですね。『俄獅子』や『勢獅子』といった踊りは、公演ごとに上演の仕方や曲の流れも変わります。これだけの人数が揃うのですから、きっと楽しく華やかになりますよ。
――先日は、イベントで歌舞伎と仮面ライダーについてのお話をされていました。
“人生の一本”となる映画を選んで上映する会だったのですが、『車引』で桜丸が笠をとって顔を出すポーズや、『蘭平物狂』の奥庭の大立廻りなどと、仮面ライダーの共通点といったことを、仮面ライダーシリーズの製作の方とお話させていただきました。日本のエンタテインメントにはすべて、歌舞伎のエッセンスが入っていると僕は思うんです。仮面ライダーファンが歌舞伎に興味を持って、浅草へ観に来てもらえたらうれしいですね。
平成25年
12月 | 「十二月大歌舞伎 仮名手本忠臣蔵」(歌舞伎座) 『仮名手本忠臣蔵』「大序」「三段目」足利直義 |
平成26年
1月 | 「新春浅草歌舞伎」(浅草公会堂) 『上州土産百両首』無頼漢牙次郎 |
2月 | 「母をたずねて膝栗毛」(新橋演舞場) 『母をたずねて膝栗毛』銀二 |
3月 | 「三月花形歌舞伎」(京都四條南座) 『素襖落』三郎吾/『御摂勧進帳』「暫」下河辺行平/『京鹿子娘道成寺』所化 |
4月 | 「鳳凰祭四月大歌舞伎」(歌舞伎座) 『壽靱猿』「鳴滝八幡宮の場」奴橘平 |
5月 | 「團菊祭五月大歌舞伎」 『毛抜』秦秀太郎/『幡随長兵衛』小仏小平 |
6月 | 「母をたずねて膝栗毛」(大阪松竹座) 『母をたずねて膝栗毛』銀二 |
8月 | 「八月納涼歌舞伎」(歌舞伎座) 『龍虎』虎/『たぬき』隠亡平助/『勢獅子』鳶頭 |
10月 | 「十月大歌舞伎」(歌舞伎座) 『鰯賣戀曳網』傾城薄雲 |
11月 | 「吉例顔見世大歌舞伎」(歌舞伎座) 『義経千本桜』「すし屋」梶原の臣 |

撮影:永石 勝
二代目 坂東巳之助
(ばんどう みのすけ)
生まれ | 平成元年9月16日生まれ。 |
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家族 | 父は十代目坂東三津五郎、姉は女優の守田菜生。 |
初舞台 | 平成3年9月歌舞伎座『傀儡子』唐子で本名で初お目見得。7年11月歌舞伎座『蘭平物狂』一子繁蔵、『壽靱猿(ことぶきうつぼざる)』小猿で二代目坂東巳之助を名のり初舞台。 |
ようこそ浅草へ
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ようこそ浅草へ「新春浅草歌舞伎」、三年目の挑戦 後篇
若手の登竜門といわれる「新春浅草歌舞伎」は、芝居に対する“熱”はどこの劇場にも負けないと、毎年、新鮮な舞台を見せています。でも、それだけではありません。中心となる出演俳優が一気に世代交代して3年目の今回は「ステップアップした私たちをご覧いただけるように」と、それぞれが強い気持ちで挑みます。後篇も公開!
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ようこそ浅草へ「新春浅草歌舞伎」、三年目の挑戦 前篇
若手の登竜門といわれる「新春浅草歌舞伎」は、芝居に対する“熱”はどこの劇場にも負けないと、毎年、新鮮な舞台を見せています。でも、それだけではありません。中心となる出演俳優が一気に世代交代して3年目の今回は「ステップアップした私たちをご覧いただけるように」と、それぞれが強い気持ちで挑みます。
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ようこそ浅草へ――後編
自分たちが新しい浅草歌舞伎の幕を開ける! 熱意を舞台にぶつけ、一人でも多くのお客様に楽しんでいただきたいと奮闘する三人が、演じる役のことを語る後編です。