こころを映す 歌舞伎の舞台
すっきりシンプル
菊五郎格子の衣裳をまとった「いがみの権太 尾上菊五郎」(三世歌川豊国画)。三世尾上菊五郎は「いがみの権太」役にこの模様を使い、彼の人気と共に流行した。早稲田大学演劇博物館蔵。無断転載禁(c)The Tsubouchi Memorial Museum, Waseda University, All Rights Reserved. |
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縦線と横線を組み合わせる格子柄=チェックは、単純明快なだけに世界各国で愛用されている柄です。縦横の組み合わせ、比率、色使いで無限ともいうほどのバリエーションが生まれるので、その種類も無尽です。有名なスコットランドのタータン・チェックは家ごとにその模様が違い、見ればどの家系のものかわかるそうですが、歌舞伎でもそれぞれの家に深いかかわりをもつ格子柄があります。
「高麗屋格子(こうらいやごうし)」は四代目松本幸四郎にゆかりのある格子柄です。『鈴ヶ森』で「お若ぇの、待たっせぇやし」と白井権八を呼び止める幡随院長兵衛を演じた際、太目の格子の中に細めの縞が縦横に入った大きな格子柄の衣裳を用いたところ大好評だったので、以来この格子柄には幸四郎の屋号(高麗屋)にちなんだ名が付きました。
その家の名前や紋を組み込んだ格子もあります。
尾上菊五郎家で使われるのは「菊五郎格子」。菊五郎の「キ(き)」と「呂(ろ)」を4本の縦筋と5本(ご)の横筋ではさんだ格子柄です。4+5=9(く)筋の数と挟み込んだ文字で「きくごろ(菊五郎)」と読ませる趣向です。
同じように縦1本(いち)横6本(む)の格子のなかに「ら」をいれて「いちむら」と読ませるのは「市村格子」(市村羽左衛門)。3本(みつ)、5本(ご)、6本(ろ)の筋で作った格子柄は「三津五郎格子」です。
「三升格子(みますごうし)」は三升の紋を格子にアレンジしたもので、三本の筋が縦横に交差します。三升は市川團十郎家の紋であり、俳名でもありますので「團十郎格子」とも呼ばれます。
また、前述の翁格子のことを「市川格子」と呼ぶ人もいます。1本(いち)と3本(川)の筋で「いちかわ」。ただ、翁格子は翁の筋はしっかり太くなくてはなりませんが、市川格子はそれぞれの太さが同じでも、数が合っていれば市川格子と呼ばれるようです。またこの格子を「三升格子」とする説もあるようで、いずれにせよ翁格子が “市川家にゆかりの格子柄”と認識されていたことがうかがえます。
言葉と絵柄を結びつけた判じ絵のようなデザインの数々は、江戸時代の人々の遊び心にあふれた暮らしを想像させてくれます。
「高麗屋格子(こうらいやごうし)」は四代目松本幸四郎にゆかりのある格子柄です。『鈴ヶ森』で「お若ぇの、待たっせぇやし」と白井権八を呼び止める幡随院長兵衛を演じた際、太目の格子の中に細めの縞が縦横に入った大きな格子柄の衣裳を用いたところ大好評だったので、以来この格子柄には幸四郎の屋号(高麗屋)にちなんだ名が付きました。
その家の名前や紋を組み込んだ格子もあります。
尾上菊五郎家で使われるのは「菊五郎格子」。菊五郎の「キ(き)」と「呂(ろ)」を4本の縦筋と5本(ご)の横筋ではさんだ格子柄です。4+5=9(く)筋の数と挟み込んだ文字で「きくごろ(菊五郎)」と読ませる趣向です。
同じように縦1本(いち)横6本(む)の格子のなかに「ら」をいれて「いちむら」と読ませるのは「市村格子」(市村羽左衛門)。3本(みつ)、5本(ご)、6本(ろ)の筋で作った格子柄は「三津五郎格子」です。
「三升格子(みますごうし)」は三升の紋を格子にアレンジしたもので、三本の筋が縦横に交差します。三升は市川團十郎家の紋であり、俳名でもありますので「團十郎格子」とも呼ばれます。
また、前述の翁格子のことを「市川格子」と呼ぶ人もいます。1本(いち)と3本(川)の筋で「いちかわ」。ただ、翁格子は翁の筋はしっかり太くなくてはなりませんが、市川格子はそれぞれの太さが同じでも、数が合っていれば市川格子と呼ばれるようです。またこの格子を「三升格子」とする説もあるようで、いずれにせよ翁格子が “市川家にゆかりの格子柄”と認識されていたことがうかがえます。
言葉と絵柄を結びつけた判じ絵のようなデザインの数々は、江戸時代の人々の遊び心にあふれた暮らしを想像させてくれます。