歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



昔も今も、元気をくれる「酸っぱいパワー」

 コンビニのお弁当コーナーに並ぶおにぎりの具の多彩さときたら──。ツナマヨネーズに牛カルビ、豚キムチなんていうのまで。でも人気投票をすると、上位には定番の鮭やたらこ、そして梅干が名を連ねているのだとか。そう、梅干はニューフェイスの台頭著しいおにぎり界で、一目置かれる実力者。なんといっても、この国で平安時代から地道に積み上げてきた信頼は、揺るぎないものがあるのです。

 日本に梅干の先祖が初めて登場するのは、聖徳太子の頃。遣隋使が中国から持ち帰った青梅の燻製「烏梅(うばい)」という漢方薬がルーツと言われています。やがて平安時代。村上天皇の天徳4年(960年)、庚申(かのえさる)の年。都には悪疫が流行り、天皇も病に倒れられました。その時、病気治療に梅干と昆布を入れたお茶が用いられ回復したと、平安中期の書物に記述が残されています。このことから梅干が、古くは薬として用いられていたことがわかります。この村上天皇のエピソードは、「庚申、申年の梅は縁起がいい」という民間伝承となり、現在でも申年の梅干は珍重されているのだそうです。

 梅干にはクエン酸やリンゴ酸、コハク酸などの有機酸が豊富に含まれています。有機酸は腸内の善玉菌は生かし、悪玉菌だけを殺菌。お腹の調子が悪いときに「おかゆに梅干」は理にかなっているのです。中でもクエン酸は代謝を高め、疲労物質の乳酸を取り除いてくれます。これからの季節、夏バテ防止に梅干パワーを利用しない手はなさそう。そもそも梅干をお皿にのせて、じーと見つめているだけで「あぁ、よだれが…」。見る人誰も酸っぱい顔にしてしまう一事をとっても、梅干の秘めたる力がうかがえます(?)。