歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


旧暦の3月3日頃は潮干狩りに最適な春の大潮の時期でした。深川、品川、高輪、佃島、芝浦などが有名で、たくさんの人々が出かけ、籠に蛤を拾い集めました。
桃や桜草は可憐な春色カラーで好まれました。とくに桜草はふわふわと柔らかな花が女の子たちの人気を集め、栽培も盛んになります。郊外まで行かなくても町中の桜草売りから買うこともできたのです。

其の二 春海を一家で楽しむ

 江戸の女の子たちは、手習いのほか歌や琴などのお稽古事の師匠のところにも通ったそうです。朝は手習い、午後はお稽古事。帰宅後には、家事の手伝いや習いごとのおさらいが控えているのですから、子供とはいえなかなか忙しい日々です。

 たまには日常を離れて息抜きしたいのは、大人も子供たちも同じこと。心浮きたつ春には、家族そろって郊外へと足をのばします。世界トップレベルの大都市となった江戸ですが、中心地を離れればすぐに大自然の息吹を感じることができました。

 人気の高い春のファミリーレジャーといえば、潮干狩りです。3月3日の桃の節句の頃には、浜辺は大混雑。大人も子供も泥に足を踏み入れ、夢中になって蛤(はまぐり)を拾い集めます。

 梅見や桜見も大事な春のイベントですが、梅は春一番の花をひっそりと風流に眺めるものですし、桜は花びらが舞う中で酒を酌み交わす無礼講スタイルが基本で、どちらかというと大人の楽しみ。ぽかぽかした陽気のなか、子供と一緒にピクニックするなら、桃見がポピュラーだったそうです。また、川べりを彩る花畑での桜草摘みも、にぎやかで楽しいものでした。

くらしの今と昔

バックナンバー