歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



大切な1冊:衣裳作りのお手本、美人画図録



『肉筆浮世絵 美人画集成』
毎日新聞社/1983年

「15年縲鰀20年前くらいでしょうかね、古本屋さんで買いました。昔の日本人の感性はすごいですね。ページをめくっていると衣裳を作るヒントがたくさんあります。若旦那(玉三郎丈)と衣裳を作るときに『こういう柄は、どうでしょうかね?』なんて言いながら相談することもありますよ。
日本画家の上村松園(うえむらしょうえん1875-1949)や鏑木清方(かぶらききよかた1878-1972)の絵もとても参考になります。衣裳に携わる人は古い時代の絵や日本画をたくさん見たらいいと思いますよ」



『小学館DVD BOOK シリーズ歌舞伎
歌舞伎のいき 第4巻[舞踊・新時代の歌舞伎]編』

小学館/2008年/定価3,990円(税込)

歌舞伎の概要や代表的な演目をわかりやすく楽しく知ることができる本です。4冊シリーズのうちの1冊、美しい衣裳写真がたくさん掲載されている舞踊編をご紹介します。 『藤娘』や『紅葉狩』など舞踊の名作も演目ごと解説してあり、DVD(96分)が付いているので、映像のダイジェストも観ることができますよ。坂東玉三郎さんの『京鹿子娘道成寺』の映像もあります!

田中教義さんのヨコガオ
 ご紹介しきれませんでしたが田中さんからは、さまざまな興味深いお話をうかがいました。昭和41年8月に新橋演舞場で上演された『花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)』で、勘弥さん(十四世守田勘弥)が清心を演じられたとき。初日の幕が開いた後に、興行主の大谷竹次郎氏(松竹創業者)から清心がまとう紫色の衣裳の色が「清心の色じゃない」とダメが何度も出されて1カ月の公演中に6枚くらい作り直したこと。当時の新橋演舞場のライトはやや赤めだったそうで、ライトによって色味が変わりやすい紫色は特に難しかったそうです。さぞかし難儀されたと思いますが「大谷さんはもう90歳近かったのに、何度も作り直させてくださって、本当に偉いよね」と敬服されていました。

 親方、小僧という師弟関係がまだまだ健在だった時代。田中さんは誰から教えられることもなく衣裳の着付を担当したそうです。ひとりで考え、演劇専門の大谷図書館に必死に通って文献にあたり、もくもくと勉強されていたようです。衣裳をまとう役の性根を知ることはもちろん、布地や染めなどの技術のこと、そしていい生地を持っている店や、腕のいい職人がどこにいるかなど総合的な知識と調整力がないと、いい衣裳はできません。田中さんは、それを知り尽くした貴重な存在。未来の歌舞伎のためにも、田中さんの知恵と経験を継承してほしいと感じました。
(取材日:2010年7月17日)


ちょっと昔の歌舞伎 モノからひもとく想い出あれこれ

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