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【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
「月の10日頃になると、翌月の舞台のためのかつら合わせが始まります。場合によってはこちらに来ていただくケースもありますが、8~9割は役者さんの楽屋に伺って行います。これが、かつら製作のスタートですね」
立役と女方、役によって多少構造は違うが、かつらの芯となるのは地金と呼ばれる銅板。かつら合わせの前にあらかじめ基本形を作っておき、それを俳優の頭にはめて調整していくのだ。
「それを持ち帰って、今度はカシュー(漆に似た塗料)で銅板をコーティングし、焼きを入れます。汗をかくと銅から緑青がでますからそれを防ぐ目的もあるんです」
(2)銅板を切り出した〈地金〉(3)地金を叩いて形を調整 (4)糊に黒砂糖(左上)を混ぜながら和紙を貼る (5)毛を通した羽二重(絹布)を地金に貼る。接着剤はなんと、白玉を練ったもの (6)〈蓑〉と呼ばれる毛束 (7)〈蓑つけ〉の作業 (8)生え際の毛を植え込むのは1本1本手作業で (9)(10)(1)熱したコテで毛を伸ばしながら整髪
そして行われるのが、出来上がった地金に和紙を貼る工程。溶き糊を基本に、ボンドは特別な場合以外使用せず、強度がほしいときは、なんと糊に「黒砂糖」を混ぜるという。
「次は、白玉が登場しますよ(笑)。地金に貼った和紙の上に、毛を通した羽二重を貼り付けていくわけですが、その際、茹でた白玉を叩いて糊代わりにするんです。これが何より付きがいいんですね(笑)」
羽二重を貼って、蓑(上写真6)をつけ、最後に俳優の額に金属が直接あたらないように裏打ち(地金の内側に布地を貼り蝋を引く)。熱したコテで髪を伸ばしながら櫛を通して整髪すれば製作完了となる。仕上がったかつらは、次に床山へと納品され、そこで各々の型に結い上げられていくのだ。
実は、和紙に黒砂糖、白玉と、かつら製作の現場には体に優しい素材が溢れているが、その理由の一つに〈髪のリサイクル〉がある。
「大幹部のかつらは毎回新しい毛を使用しますが、一度使用した毛は、湯につけて羽二重ごと地金からはがして粉石鹸で洗い、次に幹部のかつら用に、そして名題、名題下……と、髪が傷むまでリサイクルしていくんです。粘着性がある上、お湯に溶けてはがしやすい白玉は、本当に優秀な接着剤なんですよ」
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化粧をすませ、衣裳を纏い、かつらをつけた俳優たちが、役に入る〈最後の仕上げ〉=それが小道具。この連載も今回が最終回。その仕上げに、小道具の世界を探訪したい。
第5回目は〈大道具〉の世界。絢爛な歌舞伎の舞台を彩る最も巨大な美術品=大道具の製作現場を紹介しよう
歌舞伎の役とそれを演じる役者の体型に合わせて巧みに結い上げ、舞台へと送り出す床山。それはまさにカタチに残らない〈美術品〉なのだ。
今回ご紹介するのは「かつら」の世界。艶やかな黒髪から、獅子のようなワイルドなかつら、それは繊細な手作業の積み重ねによって生みだされるのです。
第2回目は、前回に引き続き衣裳編。タイトな時間のなか楽屋で行われる「着付け」とはどんなものなのでしょう?
華やかな舞台を彩る「衣裳」の世界。オリジナルの生地を仕上げる工程から縫製まで、その技術に迫ります。