歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座の床山部屋

俳優にかつらを直接かけ、外し、後の手入れも

 現在、鴨治床山㈱は立役を中心に、女方も手がけているが、「結い上げにかかる時間はおおよそ2時間くらい」と鴨治会長。意外に短い時間に驚くが、床山の仕事は、かつらを結い上げるだけでは終わらない。公演中は、劇場内にある床山部屋に常駐し、担当する役者の出番になれば、かつらを直接かけ、外し、翌日にそなえて手入れも怠れない。そこでおおよその仕事の流れを伺った。

 「翌月の演目が決まると、俳優・かつら屋さん・床山の三者が集ってかつら合わせをし、かつらの土台が納品されたら結い上げに入ります。そして、出来上がったものを役者さんにかけ、相談しながら調整を加えていきます。これを『だめ取り』というんですが、月末に行われる舞台稽古前にできると一番いい。なぜなら、舞台稽古のときに、衣裳、セット、共演者等、芝居全体のバランスを観てチェックができるから。そして劇場に入ることになります」

 しかし、ときにはイレギュラーもある。

 「例えば、『暫』の鎌倉権五郎景政のように、太白(脂)を髪の上から貼りベラで塗り固めて作るような非常に時間のかかる役もあるわけです。あの個性的な髪型は、1ヶ月かかってもできません。そこで、床山は『いついつに、あれを演るらしいよ』というウワサの時点から動きはじめるんです(笑)」

(上)劇場の床山部屋では、出演中の俳優のかつらの手入れなどを行う。(下)床山部屋横の棚にはかつらがズラリ