歌舞伎いろは

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舞台美術家の道具帳を50倍に再現

舞台美術家の道具帳を50倍に再現

 今回訪問したのは、歌舞伎をはじめ舞台・コンサートなどの美術で知られる金井大道具㈱。埼玉県越谷市にある新川工場(製作・美術)は、歌舞伎座や新橋演舞場の舞台がすっぽりと入る広大なスペースだ。時はまさに、新橋演舞場の三月公演『ヤマトタケル』の作業中。中央で区切られた工場の一方では、木材に囲まれた木工部が、一方では巨大なドロップ(背景幕)の仕上げに絵描きさんたちが、慌しく手を働かせている。

 「かつて大道具は、奈落などを使って劇場内で製作していましたが、いまは持ち込みといって、外の工場で製作し、稽古に合わせて劇場に搬入するのが一般的です」と語るのは、木工を担当する嶋田義雄さん(66歳)。

 大道具の仕事は幅広い。そのすべてのスタートとなるのが、舞台美術家(装置家)による製作図面。これは道具帳と呼ばれ、通常、実際の舞台の1/50または1/40のスケールで描かれている。それを舞台サイズに正確に拡大しながら、木工部が建物を製作し、紙を貼り(通称チャチリ)、そこに絵描き担当が色をつけ仕上げていく。

 「今回の『ヤマトタケル』のような大掛かりなものになると製作から搬入まで2ヶ月くらいかかりますが、多くは公演の前月にスタートします。もちろん新作は別ですよ。『ヤマトタケル』だって初演のときは本当に大変だったんですから(笑)」

 そして仕上がった大道具は、舞台稽古に合わせて劇場に搬入。さらに手直しを加えるのだ。


上2点とも金井大道具新川工場の木工部


大道具一筋50年、超ベテランの嶋田義雄さん