検索
メニュー
閉じる
過去の公演情報から現在の公演情報、ニュース、読み物コンテンツを検索することができます
検索する
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
「稽古がはじまると、舞台美術家のチェックもありますが、俳優の動きによって狭いとか広いとかいろいろ調整が出てきます。それを劇場で手直しして、我々が最終的に固めると、次に照明担当の人々がそこに明かりを作る。これで初日の舞台の完成です」と嶋田さん。
その「固め」が終わると、大道具は工場の搬入・仕込みスタッフから、劇場担当へと受け渡される。劇場担当は、公演中、芝居に合わせて背景を転換し、メンテナンスを行い、まさに舞台裏をその手で支えるのだ。
立体の細やかさもさることながら、大劇場の観客を魅了する大道具の一つがドロップと呼ばれる吊るしの背景。舞台美術ならではの壮大なスケールで描かれるそれは、すべて絵描きの目と感覚による。
「例えば『ヤマトタケル』のメインとなる太陽は、通常のドロップとは違います。幕の後ろから照明をあてることで画が浮き出る特殊なルーセント・ドロップというものなんですが、地色から何回もスプレーを噴き、乾かしてはまた噴く、を繰り返して完成します」とは、金井大道具の美術統括部長さん。
「大道具の絵描きに何が大事かといわれたら、一番は明暗。劇場で観たときの奥行きは、それでしか表現できません。道具帳を見て色を読み、50倍にしたとき芯にくるものを感じ取る。なかなか難しいけれど、その目を養うには、観察すること、色を作ること、デッサンすることしかないんです」
新川工場の床一面に、『ヤマトタケル』で使うドロップが広げられていた。手前の赤いマシンは「ホットガン」といい、絵の具を乾かすためのもの。冬場は暖房にもなる
『ヤマトタケル』の「太陽」は、こうして作られた! (1)『ヤマトタケル』の舞台で重要な装置となるルーセントドロップの「太陽行灯」を描いた道具帳 (2)(3)まず、地の色となる赤いところは一度に塗りつぶすのではなく、何度も色を塗り重ねて深みのある色合いに仕上げる。さらに、太陽のクレーターを描く時には、細かいウレタンの粒でマスキング(※1)をして、範囲の広い薄いグレーから塗り始める。マスキングで縁取られる範囲を徐々に狭めてゆき、塗る色も徐々に濃くしてゆく。この作業を何度も繰り返すことによって、自然な濃淡のクレーターができあがる。(4)絵の具が乾いたら、ウレタンのマスキングはほうきで優しく掃いて取り除く。(5)立体的で、美しい色合いの太陽のルーセントドロップが完成。(6)この丸い木枠の中に電飾をつけてからルーセントドロップを張り、内からの淡い光で照らして「太陽行灯」が完成となる。 (※1)マスキング:絵の具などを塗る際に、絵の具がはみ出さないように、塗る箇所の周囲を覆い隠すもの。
1 2 3 4
化粧をすませ、衣裳を纏い、かつらをつけた俳優たちが、役に入る〈最後の仕上げ〉=それが小道具。この連載も今回が最終回。その仕上げに、小道具の世界を探訪したい。
第5回目は〈大道具〉の世界。絢爛な歌舞伎の舞台を彩る最も巨大な美術品=大道具の製作現場を紹介しよう
歌舞伎の役とそれを演じる役者の体型に合わせて巧みに結い上げ、舞台へと送り出す床山。それはまさにカタチに残らない〈美術品〉なのだ。
今回ご紹介するのは「かつら」の世界。艶やかな黒髪から、獅子のようなワイルドなかつら、それは繊細な手作業の積み重ねによって生みだされるのです。
第2回目は、前回に引き続き衣裳編。タイトな時間のなか楽屋で行われる「着付け」とはどんなものなのでしょう?
華やかな舞台を彩る「衣裳」の世界。オリジナルの生地を仕上げる工程から縫製まで、その技術に迫ります。