
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
こころを映す 歌舞伎の舞台
大阪松竹座正面外壁テラコッタが果たした役割
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大阪松竹座が竣工したその年に、鉄筋コンクリート造とテラコッタという建築構造と素材の歴史を変える出来事がありました。大正12年9月1日に起こった関東大震災です。この大震災の後、煉瓦造による建築が法律によって規制され、鉄筋コンクリート造が普及したことは有名ですが、鉄筋コンクリート造の普及とともにテラコッタが一時代を築き上げたことはあまり知られていません。この理由は、テラコッタで建築を装飾するという行為が、20数年という短い期間に限定されて使用されたためです。しかしながら、関東大震災から日本が戦争に向かおうとするわずか20年という期間は、大震災からの復興という目的のため日本がひとつになっていた時代で、建築業界においても復興への思いや願いが込められて建物が築かれていた時代だと思います。震災直前に建てられた大阪松竹座の建築装飾に学び、国産のテラコッタを作ることで日本人による日本の復興を実現しようとしていたのかもしれません。このことを裏付けるように、震災直後に発行された大日本窯業協会誌(大正13年)には「復興建築材料」として国産のテラコッタ生産の必然性が説かれていました。
関東大震災の直前に建ち阪神大震災を耐えて、大阪松竹座の正面ファサードに残るテラコッタを見ながら、東日本大震災から復興しようとする日本にとっての建築装飾のありかたを思い、建材メーカーとしてやらなければいけないことは何かを考えています。
INAX ミュージアム推進グループ リーダー
後藤泰男
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平成 劇場獨案内
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