歌舞伎いろは

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2階から見た客席内。写真の手前から右の部分は2階席。舞台上手(かみて)に明るく発光しているのは、見学者のために放映されているテレビ。

客席上には、昨年の公演に出演した俳優の家の定紋が入った提灯が並んでいた。小屋が今年の公演の準備に入ると、提灯も変えられることになる。

江戸の芝居小屋の面影を残す重要文化財

花道横にある「空井戸(からいど)」。現在ではここにしかなく、この小屋独特の"仕掛け"として使われる。すっぽんと同じように、奈落につながっている。

写真上部中央に「金毘羅大芝居」の看板が掲げられている。ちょうどその下の柱の間隔は、他の柱間よりも広く、この位置の席は"特等席"となる。

1階客席の最後方、一番舞台から離れたこの一段高くなったところの席を「青田組」という。写真右に花道奥となる鳥屋が少し写っている。

奈落から見上げた「空井戸」。

2階桟敷席の外側の廊下。雨戸は引戸ではなく、外に上げて開ける方式。

「旧金毘羅大芝居(金丸座)」は現存する日本最古の芝居小屋。正面中央の鼠木戸をくぐり、小屋の中に足を進めていくとタイムスリップしたような感覚にとらわれます。足を進めて客席場内に入ると、眼前に広がるのは1階平場席。整然と升目に区切られた様は圧巻、俳優の定紋の入った高さ120cm幅40cmのりっぱな顔見世提灯が天井にずらっと並んでいる様は壮観です。

 平場には「いろは…」「壱弐参…」と席番が示されており、よく見ると後方が高くなるよう傾斜がついているのがわかります。升目を作る板の中に幅の広いものがありますが、これは「歩み板」という通路。俳優さんがこの細い通路まで使って客席に入ってくる場合がよくあり、場内は大変盛り上がります。そして、舞台前・花道横にある正方形の「空井戸(からいど)」(左上写真)も客席が大いに湧く仕掛け。現在ではこの劇場にしかありません。深さは70cmほどですが、底は奈落につながっており、さまざまな演出の可能性が広がります。上手には仮花道もあります。

 2階席正面の向こう桟敷は前舟、中舟、後舟に分かれ、1階と同じように2階にも東西の桟敷があります。上手側2階西桟敷にある「金毘羅大芝居」の額の下の席は、柱の間隔が広くなっている特別席で、平成9年には皇太子ご夫妻がそこで芝居をご覧になりました。文字通り「旧金毘羅大芝居」のロイヤルボックス、というわけです。

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