【28日まで】春猿、月乃助「納涼新派公演」で熱演

 8月28日(木)まで、三越劇場で上演中の 「納涼新派公演」では、市川春猿、市川月乃助が出演、夏の風情たっぷりの『螢』と、客席を笑いに包み込む『江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし』で、暑さを吹き飛ばす熱演を見せています。

 浅草、鳥越神社のご祭礼とあって祭り囃子も賑やかな夕刻、神妙な面持ちで話し込む3人。『螢』で月乃助が演じる錺(かざり)職人の榮吉は、この場に至るまでの人間関係や出来事を、職人らしいすきっとした江戸弁で語っていきます。いかにもまじめで職人気質の榮吉像を月乃助がくっきりと描き出すことで、物語の主筋となる兄弟子の重一(永島敏行)や、重一の元女房で今は榮吉と夫婦になったとき(波乃久里子)らの複雑な心情が、いっそう深みを増して胸に迫ります。

 休憩をはさんで『狐狸狐狸ばなし』が始まると、舞台は同じ浅草近くでも、時代はさかのぼって江戸末期へと、春猿の演じるおきわが一気に客席を引き込みます。間男に惚れ込み、亭主を毛嫌いするおきわは女郎上がりでやきもち焼き。色気はもちろん可愛らしさもあり、不義密通の大罪を犯していてもどこか憎めない魅力的なヒロインを、春猿が生き生きと演じています。

 そのおきわから何があっても離れないという亭主、元上方役者の伊之助。おきわのためにいそいそと家事をこなす伊之助は、『螢』の榮吉とは正反対ともいえる役柄ですが、なによりも月乃助自身が楽しそうに演じているのが伝わり、おきわと伊之助の息の合ったやりとりに、場内は大爆笑。テンポよく芝居が進んでいきます。

 どんでん返しの連続は、歌舞伎公演でもお馴染みですが、今回はどこまでひっくり返るのかもお楽しみに。螢の光のようにほのかな輝きを見せては消える、はかない男と女の情話にひたった後は、大笑いで暑気払い、納涼新派公演へどうぞ、足をお運びください。

2014/08/11