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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」初日開幕
2024年1月2日(火)、歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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昼の部は、『當辰歳歌舞伎賑(あたるたつどしかぶきのにぎわい)』で幕が開きます。華やかな舞踊2題で構成され、まずは「五人三番叟」です。三番叟(中村福之助、虎之介、鷹之資、玉太郎、歌之助)が、新年を寿ぐ躍動感あふれる踊りを見せ、客席からは大きな拍手が送られました。続く「英獅子」は、初春の江戸情緒を、芸者と鳶頭が表現するひと幕です。正月を迎えた吉原に、芸者お京(雀右衛門)と、鳶頭の又吉(又五郎)、鴈次(鴈治郎)がやってきて、芝居町の木挽町をはじめ、江戸の名所を詠み込んだ長唄に合わせて踊ります。後半は芸者が正月の獅子舞をあしらい、鳶頭は獅子の狂いを披露。祝祭性あふれる舞踊に、場内はいっそう華やぎました。
続いて『荒川十太夫』。物語は、主君の仇である吉良上野介を討ち、本懐を遂げた赤穂義士四十七士のうち、大石内蔵助の嫡男・大石主税(左近)らとともに、松平家に身柄を預けられた堀部安兵衛(中車)の切腹の場面から始まります。高い身分の安兵衛に対し、介錯をつとめる荒川十太夫(松緑)は「徒士(かち)」という身分の低い侍。苦悩を抱え葛藤する十太夫の姿と、藩主の松平隠岐守(坂東亀蔵)をはじめとする周囲の人々との関わりが大きなみどころです。武士としての覚悟や誠実さが胸を打つ、「忠臣蔵」の後日譚に、客席から温かい拍手が送られました。
昼の部の最後は、『狐狸狐狸ばなし』です。元は上方の女方役者、今は浅草で手拭染屋を営む伊之助(幸四郎)は、女房のおきわ(尾上右近)に首ったけ。しかしおきわは、深い仲の重善(錦之助)と夫婦になりたい一心から伊之助を毒殺します。ところが翌朝、死んだはずの伊之助が現れて…。伊之助とおきわ、重善の三角関係に、どこか抜けた雇人又市(染五郎)など、個性豊かな登場人物が絡み、テンポよく繰り広げるやり取りが観客の初笑いを誘います。狐と狸の化かし合いよろしく、男と女の色と欲が絡む騙し合いが描かれた、喜劇の傑作をお楽しみください。
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夜の部は、『鶴亀』で幕開きです。新しき春を寿ぐ節会が行われる宮廷に、女帝(福助)が廷臣と従者を伴って出御します。古来より吉祥を象徴する動物として尊ばれ、長寿を保つ生物と位置づけられてきた鶴(幸四郎)と亀(松緑)に扮した廷臣が、嘉例の舞を舞い始め、従者(染五郎、左近)も加わり、国土安穏と五穀豊穣を願って舞い踊ります。気高く美しい佇まいを見せる女帝の舞いをはじめ、格調高いご祝祭舞踊に、場内はお正月らしい晴れやかな空気で包まれました。
続く『寿曽我対面』では、工藤祐経(梅玉)を筆頭に、傾城の大磯の虎(魁春)、小林朝比奈(彌十郎)、諸大名らが居並び、色彩豊かな景色で幕が開きます。そこへ、曽我十郎(扇雀)と五郎(芝翫)の兄弟が花道から登場。二人の父は工藤の不意打ちにより落命し、その仇を討とうとする五郎が工藤に詰め寄り、三方を押し潰す件は大きな見せ場の一つです。工藤は兄弟に討たれる覚悟を極め、後日の再会を約束し幕切れとなります。舞台全体が絵画的な美しさを見せる「絵面の見得」で、歌舞伎の様式美を堪能できる、充実のひと幕となりました。
そして、高麗屋三代で上演される『息子』です。雪が降る冬の夜、江戸の入口近くにある火の番小屋で侘び住まいをする老爺(白鸚)のもとへ、捕吏(染五郎)と入れ替わるようにやって来たのは、金次郎(幸四郎)という若い男。火にあたるように勧める老爺と金次郎は、互いに親子であることに気づかずにいるが、やがて言葉を交わすうち…。はからずも再会した親子の会話に、観客は緊張感のなかぐっと聞き入ります。二人の置かれた状況や互いを思う心情、親子の情愛が感動を巻き起こし、客席からは鳴りやまない大きな拍手が送られました。
夜の部は、『京鹿子娘道成寺』で打ち出しとなります。白拍子花子を、2日(火)~14日(日)に壱太郎、15日(月)~27日(土)に尾上右近が勤めます。幕が開くと大きな鐘が吊られており、鐘供養のため所化が集まります。そこへ白拍子の花子が現れ、舞を披露しますが、次第に花子の形相が変わり…。切ない恋心を情緒たっぷりに表現する「クドキ」や、躍動的な踊りを次々と見せ、執念の化身である蛇体に姿を変える幕切れまで、観客は釘付けとなりました。
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劇場前には門松が飾られ、場内1階ロビーは正月飾りで華やかに彩られています。普段以上に晴れやかな雰囲気に包まれた歌舞伎座で、お正月らしい気分を楽しむ、多くのお客様の姿が見受けられました。
歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、
歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」は27日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。