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森光子・勘三郎 新橋演舞場で初共演

新橋演舞場の10月公演は「錦秋演舞場祭り 中村勘三郎奮闘」と銘打ち、昼の部は「十月大歌舞伎」、夜の部は「森光子・中村勘三郎特別公演」として新作『寝坊な豆腐屋』が上演されます。
『寝坊な豆腐屋』では、森光子と勘三郎が待望の初共演。昭和30年代後半、東京のとある下町を舞台に、時代が大きく変貌する中、下町の人々が笑い、泣き、怒りながらも前に向って生きていく人生の機微を情感豊かに描きます。
8月30日、森光子、中村勘三郎、脚本・鈴木聡、演出・栗山民也が出席して製作発表会見が行われました。
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脚本・鈴木聡―――

『寝坊な豆腐屋』という、ちょっとお間抜けな題ですが、豆腐屋は本来早起き。勘三郎さんが演じるのは駄目な豆腐屋で、その母親が森光子さん。その母親も36年前ひょいといなくなってしまい、また、ひょいっと帰ってくる。無謀で42歳で独身という町の心配者の豆腐屋の勘三郎さんがどうなっていくんだろう…と話は進みます。
母親と息子というのは、お互いとても気になったり、優しくしたいけれどなかなかそうしない。そんなじれったい愛情の関係から"母と息子のラブストーリー"ができればいいなと思って書きました。
このお二人の脚本を書くというのは、これはもう大変なプレッシャーです(笑)。この夏の間中「ああでもない、こうでもない」って書きました。本当にこのような機会を与えていただいて、感謝の気持ちで一杯です。今や、脚本を書き上げた僕は…早く見たいなと思っています(笑)。
演出・栗山民也―――

こんな素敵なお二人の共演、とにかく全力を尽くします。森さんも勘三郎さんも時代を突き抜けたようなキャラクターですから、芝居の中にちょっとアバンギャルド的な瞬間も入れたいと思っています。
鈴木さんの脚本はいつもよりもちょっとまじめ(笑)。真正面から向き合って書かれていて、とても面白い。"まじめ"で"破けた"新しい物ができればいいなと考えています。
森光子―――

このお話を頂戴してから今日まで、とても長いような短いような、今日の朝になって「あぁ、今日なんだ」と思いました。十八代目勘三郎さんは私にとって、とても眩しい方でいらっしゃいます。
お父様の勘三郎さんはもちろん、素晴らしくていらっしゃって、その素晴らしさは何度も拝見させていただきましたけど…趣味のほうのマージャンでは、色々ズルをなさったりして(笑)。
とにかく胸がドキドキしてます。この高まりをちょっと抑えて、勉強させていただきたいと思っています。
中村勘三郎―――

うちの父が亡くなりました時、私は国立劇場にいて死目に会えませんでしたが、本当に息を引き取るときに、そばにいてくれたのが森先生、そして嫁の好江と二人だけだったんです。
先ほど、マージャンの話も出ましたけど、うちの親父と森先生は本当に仲が良くて、私も子供のころから森先生のことが大好きでした。最後に息を引き取るときにいてくれたって事もこれも大切な一つのご縁だと思っています。
ですから、今回の公演、うちの親父が一番喜んでくれると思います。それに"中村勘三郎奮闘"公演、うちの親父は大好きだったんですよ、こういうのが(笑)。多分最初で最後です、こんな朝から晩まで(笑)。
脚本を読んで泣きました。ラストシーンは涙が止まらなかったですね。そういう風に芝居でやれればなと思っています。それに、これは昭和37年の芝居。自分が生まれた後の芝居、自分が生きてる時代な訳でしょ。そういう時代をやらせていただくのは、生まれて初めてなのでドキドキしております。
勘三郎さんについて―――
森光子―――
眩しいんです。本当に天才でいらっしゃいます。その方がよく努力をなさってるお姿も拝見していました。
でも、これからお稽古で、比較的近くになれれば、前よりも少しは、はっきりお顔も見られるかな、と思っております。
森光子さんについて―――
勘三郎―――
今度も、こうやって新作をやられるって、すごいですよね。最初、例えば『瞼の母』なんてどんなものかなって聞いたら、いやだって(笑)。今あるものじゃなくて、新しいものをやる。演劇人の先輩として、これは見習うべきだよね。そういう挑戦、それだけでも頭がさがります。私も頭が下がって顔が見れません(笑)。
もう一つ、子供たちは、昼の部だけの予定だったんですけど、(森先生が)どうしてもって…これで親子三代で共演。鶴ならず、森の一声で(笑)
それに、これだけの大女優なのに、えばったところも、怒ったところも見たことがない。腰が低くて、普段から全く変わらない。そういう所は真似をしたいし、そうでなければいけないと思います。
勘三郎さんの小さい頃のエピソード―――
森光子―――
(先代の)勘三郎先生のお芝居を拝見して、その後、ご自宅へうかがってマージャンというのは、いつもコースでございまして、当然夜遅くなります。
深夜になりまして、なんかトントンって二階から音がしておりました。なんだろうとおもって、「先生あれ何の音ですか?」ってうかがったら「哲明(のりあき・当代勘三郎の本名)ですよ」って。お稽古なさっていたんです。
その時のおっしゃり方が、"えらいでしょ、こんな夜中までやってるんですよ"って、そういうおっしゃり方じゃなかったんです。その言葉は息子さんというより、ライバルのことをおっしゃってるような感じがして、その時に、すごい親と子でいらっしゃるなと思いました。
それから、本当に(勘三郎さんは)天才だと。恥ずかしがらすに申します。天才が夜中に努力をしていらしたのを、この目で、この耳ではっきりとうかがいましたから。
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先代勘三郎とは舞台・ドラマで共演している森光子ですが、当代とは今回が初共演。また、新橋演舞場への出演は、昭和41年10月以来、41年ぶりとなります。昼は勘三郎が歌舞伎に奮闘する「新橋演舞場十月公演 錦秋演舞場祭り 中村勘三郎奮闘」。今から楽しみです。
公演情報は こちらをご覧ください。