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「高麗屋三代襲名披露祝賀会」で三人が語った襲名への思い

「高麗屋三代襲名披露祝賀会」で三人が語った襲名への思い

 「高麗屋三代襲名披露祝賀会」 左より、染五郎改め十代目松本幸四郎、金太郎改め八代目市川染五郎、幸四郎改め二代目松本白鸚、坂田藤十郎、大谷信義松竹株式会社会長、迫本淳一松竹株式会社社長

 

 

 11月26日(日)、帝国ホテル東京で、「二代目松本白鸚 十代目松本幸四郎 八代目市川染五郎 高麗屋三代襲名披露祝賀会」が開かれ、松本幸四郎、市川染五郎、松本金太郎が、来年1月歌舞伎座から始まる襲名披露に向けての心境を語りました。

 昭和56(1981)年10月・11月歌舞伎座、初代松本白鸚、九代目松本幸四郎、7代目市川染五郎の親子孫三代同時襲名から37年、歌舞伎座開場130年となる平成30(2018)年の劈頭を飾るのが、二代目松本白鸚、十代目松本幸四郎、八代目市川染五郎の襲名披露です。

 

「高麗屋三代襲名披露祝賀会」で三人が語った襲名への思い

開宴を前に語った、襲名披露への気持ち

 染五郎は七代目襲名当時8歳、「多くの方々に注目していただける、たくさんの方に見られている緊張感を思い出します」。八代目染五郎となる金太郎は12歳。「(父も祖父も)歌舞伎以外のことを、また歌舞伎でも新作をつくったりと新しいことに挑戦している。自分もそうなりたい。代々の染五郎がやってきたことを受け継ぎたいですし、自分なりの染五郎を一からつくっていきたい」とのビジョンを持って襲名に臨みます。

 

 幸四郎から、「染五郎という器から芸があふれ、親としてはそれほどの役者になったかという喜びと、もったいないという気持ちがあり、器を幸四郎に変えれば、新たに芸が詰め込まれるのではないか」との言葉を受けた染五郎は、「なんとかなれ、頑張れというプレッシャーだと感じます。自分が歌舞伎の戦力になりうることを信じて舞台に立ち続けたいと思います」と、父の言葉を受けて、さらなる精進を誓いました。

 

 「これができるか、やってみろと突きつけられ、それをやってきた幸四郎時代でした」と、今では挑戦してきたことがすでに思い出だという幸四郎。「人生のアディショナルタイムになりましたけど、点が入るかもしれませんし、あわよくば逆転するかもしれない。それくらいの意欲をもってやりたい」と、舞台にかける情熱に衰えはありません。

「高麗屋三代襲名披露祝賀会」で三人が語った襲名への思い

 

 

「天に向かって歌舞伎の舞台を生涯勤めてまいりたい」

 祝賀会の前の取材に答えた三人は、笑顔で招待客を迎え、広い会場はあっという間に高麗屋を応援するファンで埋め尽くされました。祝辞に続き、日本俳優協会会長として壇上に立ったのは藤十郎。「これだけの方がいらして、歌舞伎のよさを間近に感じました。本当に古いものは逆に新しい。皆様方の中にあるものを歌舞伎が表に出して観ていただきたい。そういう言葉をこの場で出させてくれるのは、皆、彼らのおかげです」と、ユーモアをたっぷり交えて話しました。

 

 祝辞を受けて最初に挨拶に立ったのは染五郎。「25日、私、そして父が36年間名のってきた名前、倅が8年間名のってきた名前の千穐楽を迎えました。私なりに明日こそ何とかしようという思いで毎日舞台に立ってまいりましたが、千穐楽を迎えてもう明日がありません。あれができなかったこれができなかったが、終わったときの正直な感想です」と、反省と後悔の念を率直に明かしました。

 

 「ただ、染五郎でいた間、多くの出会い、ご指導、ご後援をいただきましたことを本当に幸せに思っております。これからも高麗屋、そして藤間家の中にある芸の力を信じまして、自分の勤める舞台が歌舞伎の戦力となることを信じまして、天に向かって歌舞伎の舞台を生涯勤めてまいりたい所存でございます」。力強いその言葉に、会場から大きな拍手が贈られました。

 

歌舞伎座開場130年、平成最後の襲名

 金太郎は襲名披露狂言となる『勧進帳』の源義経、『仮名手本忠臣蔵』「七段目」の大星力弥について触れ、「どちらも高麗屋にゆかりのある演目、お役ですので、大変うれしく思っております。これからも一所懸命に勤めますのでよろしくお願いいたします」。頼もしさを感じさせる言葉に、温かい拍手がひときわ大きくなりました。

 

 37年ぶりの三代同時襲名を夢のようだと語った幸四郎は、「来年は歌舞伎座ができて130年、歌舞伎座のさよなら公演が始まって、私どもの襲名で10年。私どもの襲名はもしかしたら、平成最後の襲名となるかもしれません。節目はそんなに堅苦しいものではない、自分が頑張ってきたものを息子に与える、その心を大事だと思ってまいりました。心というものがどれだけ大事か、今日、おいでのお一人お一人のお顔を拝見していてそう思います」と、感謝の気持ちを微笑みに代えて挨拶しました。

 

 そして、華やかな宴の最後に御礼の挨拶に立った染五郎は、「今日、初めてこの黒紋付、浮線蝶の紋を着させていただきました」と切り出し、目をやった先には染五郎の三ツ銀杏ではなく、幸四郎の浮線蝶。「今日をスタートといたしまして、浮線蝶の紋をつけた十代目松本幸四郎、いえ十代目はもうつけません、松本幸四郎はこの世に一人、松本幸四郎として立派にこの紋付を着られるように、一日も早く着られるように勝負してまいりたいと思っております」と高らかに宣言し、万雷の拍手を浴びたところでお開きとなりました。

2017/11/28