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壱太郎が語る『GOEMON ロマネスク』

壱太郎が語る『GOEMON ロマネスク』

 2月15日(木)から、徳島県の大塚国際美術館システィーナ・ホールで始まる「第八回システィーナ歌舞伎」に出演の中村壱太郎が、上演される『GOEMON ロマネスク』について語りました。

 ――『GOEMON ロマネスク』で、奈桜姫と金毛九尾の狐を勤める壱太郎さん。どんな物語になるのでしょうか。

 『GOEMON』という作品は、システィーナ歌舞伎の第三回でやりまして、大阪松竹座、新橋演舞場でも上演され、後々に残る作品になったので思い出深いものがあります。今回は、続編というより、いわば外伝編。これまでとは違う作品、新たな作品と思って観ていただいたほうがいいのではないでしょうか。

 

 話はほぼイスパニア、今でいうスペインで進みます。伊達家が幕府を倒すため、イスパニアの無敵艦隊を力にしようと、使節を送ったという設定です。演じる奈桜は伊達家のお姫様。日本やアジアでは古来、絶世の美女が国を傾ける話があり、何かが憑りついてそういうことを成したということを引いてきて、今回は九尾の狐が奈桜姫に憑りつき、欲を持った人間を動かしていくことになります。

 

 ――奈桜姫はどういうふうにつくっていかれますか。

 お姫様ながら、九尾の狐が入って悪女になるので、国崩しの感じになります。普段はニヒルというか、普通のお姫様ではなく、スペインに溶け込んだ、土地の文化、風習の影響を受けた扮装にしたいと思います。また、九尾の狐が正体を顕すところでは、ダイナミックな歌舞伎らしい大きさと、システィーナらしい立廻りをお見せできると考えています。

 

 ――役づくりとして衣裳や鬘、化粧などを工夫されるのですね。

 システィーナ歌舞伎では扮装に一番こだわりを持っています。あの空間での絵面としての美しさ。配色として、普段の歌舞伎では着られないようなものも着ます。女性が入ったり、洋楽が使われたりして醸し出されるシスティーナ歌舞伎の雰囲気に負けず、かといって和で戦いを挑んだのでは喧嘩になってしまいますから、どう調和していくのかに、扮装は大事な手助けとなるのです。歌舞伎俳優としてどこまで和の要素、女方の要素を残すのかは、僕らに課せられた役割だと思っています。

 

壱太郎が語る『GOEMON ロマネスク』

 祖父(藤十郎)も昔、女性が出る東宝歌舞伎をやっていましたが、その資料を見たり、OSKなど歌舞伎以外の舞台を手がけられている衣裳さんの提案をいただいたりと、扮装のヒントはたくさんあります。お話は脚本に忠実に演じていけばわかりやすく、面白くなっているので、あとはどう装飾するか。ちょっとしたアクセントではありますが、楽しんでいただきたいところです。

 

 ――楽しみといえば、宝塚歌劇団の元トップスター、彩輝なおさんの出演も楽しみです。

 彩輝さんが男役で、僕が女方の芝居はなかなか興味深いです。二人で向き合うシーンもあります。宝塚の舞台は拝見していましたが、一緒にお芝居をするイメージはまったくなかったので、どうなるか僕も本当に楽しみにしています。

 

 ――フラメンコの場面も期待されています。

 奈桜も踊ります。これまでの、五右衛門に教わりながらとは違い、いきなり踊れます。今回も出演される(フラメンコ舞踊家の)佐藤浩希先生とよくお話ししているのですが、歌舞伎の舞踊とフラメンコは似たところがあるんです。重心が下にある、一定しているところなど、共通点があるからこそ馴染みやすく、和に落とし込みやすい。また、魂の踊りといわれる熱い思いもつながる気がします。でも、歌はもう歌いません。宣言します。

 

 ――舞台は、第三回の『GOEMON』と同じ、客席に囲まれたアリーナ形式になるそうですね。

 いつもは見えないところが全部見えてしまうので、引抜きなどが大変です。体の向きや視線も難しい。たとえば、どの位置で見得をするのかなど、初日が開いてからも工夫を重ねていました。また、(具象的な装置のない)構成舞台なので、どうしたらここが森に見えるのか、酒場に変わったとわかるのかなど、動きで見せなければいけない比重が大きくなります。やりがいもあり、難しさもあります。

 

 ――最後に、“和と洋のコラボレーション”を掲げるシスティーナ歌舞伎の魅力をあらためて。

 洋の空間に歌舞伎の役者が立つだけだとどうしても違和感がありますが、そこを音楽や照明が助け、一つの舞台ができています。洋楽の演奏、洋の舞踊でスペインの雰囲気を醸し出していただいた中に、僕らが入っていくからこそ、違和感が払しょくされる。音楽はホールと僕らをつなぐものなのです。

 

 そして、システィーナ・ホールではレプリカとはいえ名画に囲まれた中で芝居ができ、一つの空気、雰囲気に包まれている感じになります。僕たちにとっては、その空間を好きに使うことができ、創作の場としてとても素敵な場所。ご覧になるお客様にも、その空間の素晴らしさと普通の歌舞伎とは違う空気感を味わっていただけます。ぜひ、足をお運ください。

 大塚国際美術館システィーナ・ホール「第八回システィーナ歌舞伎『GOEMON ロマネスク』」は、2月15日(木)から18日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2018/02/06