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齊入、右團次が語る、大阪松竹座「十月大歌舞伎」
10月2日(火)に初日を迎える大阪松竹座「十月大歌舞伎」で、襲名披露する二代目市川齊入、三代目市川右團次が、公演への思いを語りました。
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齊入と右團次、103年ぶりの共演
大阪ゆかりの齊入、右團次の名跡が並ぶ大阪松竹座「十月大歌舞伎」、幕開きは『華果西遊記』です。「2000年12月に師匠(猿翁)が若手に当ててつくってくださった澤瀉屋演出の西遊記です。髙嶋屋右團次が澤瀉屋の演目をすることで、この澤瀉屋の演目が広く歌舞伎の御代に伝わっていけば、有意義なのではないでしょうか」と右團次。大阪松竹座初御目見得となる市川右近も出演します。
『襲名披露口上』に続いては『め組の喧嘩』。尾花屋女房おくらの齊入は、「女将さんはこれまでもいろいろやっておりまして引き出しもありますが、また別のものも出していきたいと思っております」と、持ち役の役柄でありがたいと感謝したうえで、襲名披露にあたっての意欲を見せました。右團次は四ツ車大八。「市川宗家の大きな名跡を名のらせていただけることになって、非常に(役の)守備範囲が広がりました。自分の役割が増え、自身の新たな扉を開けてくれているように思います」。
まるでこの襲名のためにつくられた演目
昼の部は海老蔵の新作歌舞伎舞踊『玉屋清吉』で打ち出しとなり、夜の部は通し狂言『雙生隅田川』で襲名披露の二人が共演します。右團次は、「早替りの要素、宙乗りのケレン、最後は本水立廻りで、初代、二代目が非常に得意とされていた『鯉つかみ』が入っています。よくもこんなに(右團次襲名に)ぴったりの演目が師匠の四十八撰にあったなと。まるでこの襲名のためにつくっていただいたのかと勘違いするくらいに、代々の右團次さんの要素がとり入れられた演目です」と、不思議な縁に驚くばかりといった様子です。
昨年1月の新橋演舞場で、梅若丸と松若丸で初舞台を踏んだ息子の右近は、古典から新作までこれまでに数多くの舞台に出演しています。「子役として非常に恵まれています。早替り、宙乗り、その経験をふまえてさらなる充実を図れるよう、今回はさらに厳しく指導していきたい」と、右團次は親として先輩俳優としての姿勢を見せました。齊入は局長尾。「片はずし、局は、独特のお芝居。自分で考え、前になさった方の意見もお聞きして勉強していきたい」。
右團次を通じてつないでいくもの
「祖父(二世右團次)の宙乗りの資料が残っておりまして、猿翁さんが人を介してお借りにみえたときに父がお貸しし、そこから工夫なさって(傘の宙乗りを)猿翁さんがなさいました。澤瀉屋の兄さんを通じて、右團次さんにうちのお祖父さんの芸、仕掛け、ケレンが伝わってきたことがうれしい」と、齊入は顔をほころばせました。
そういわれた右團次も、「屋号、名が変わっても、自分の中にあるのは三代目猿之助(猿翁)という人。(その芸を)屋号や名前の垣根を超えて後に伝えていきたいというライフワークが、すなわち代々の右團次さんがやってこられたことにつながっていることに、非常にご縁を感じております」と述べ、今回の襲名披露が歌舞伎の継承の一つの道筋となったことが伝わってきました。
大阪生まれの二人をあと押ししたお練り
本名が「齊入の一字である齊。あらためて、縁のある名前なんだなと思いました」と齊入が明かすと、本名が右近の右團次も続けて、「右の字つながり、右團次が上方歌舞伎の名跡で私が大阪生まれ、右團次がケレンの大名跡で私がケレンの世界でずっと修業させていただいたこと、この3つがあってのこの度の襲名」と話し、二人ともに襲名した名前との縁の深さを、あらためて感じ入っていました。
道頓堀でのお練りでは、身動きできないほどの賑わいで声援を浴びました。「大阪に生まれた二人にとって、地元で応援していただけることはなによりうれしい。心強い」と齊入。右團次は、「道頓堀五座の賑やかなりし頃の、古き良き道頓堀が今もあると心得て、舞台を勤めたい」と気を引き締め、息子の右近にも「道頓堀を愛する人になってほしい」と、大阪での襲名披露に向けいっそう気合を入れていました。
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大阪松竹座「十月大歌舞伎」は10月2日(火)から26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹で販売中です。