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幸四郎、菊之丞「襲名道中膝栗毛 先斗町高麗夜話」で襲名への道をたどる

幸四郎、菊之丞「襲名道中膝栗毛 先斗町高麗夜話」で襲名への道をたどる

 「襲名道中膝栗毛 先斗町高麗夜話」にかけつけた南座宣伝部長みなみーな。幸四郎との仕事も数多いけれど、「なかなか距離感が縮まらない」と幸四郎。ここは、がっちり握手で気持ちも新たに襲名披露へ!

 

 

 10月11日(木)、京都 先斗町歌舞練場で「襲名道中膝栗毛 先斗町高麗夜話」が行われ、松本幸四郎、尾上菊之丞が登場しました。

 幸四郎が手がける新作や出演作品で、たびたび振付や出演で名前が挙がる菊之丞。イベント会場となった先斗町歌舞練場で、朝から芸妓さんたちと稽古をしていたという菊之丞が、来月の南座で襲名披露する幸四郎を迎えるという形で、「襲名道中膝栗毛 先斗町高麗夜話」がスタートしました。

 

幸四郎、菊之丞「襲名道中膝栗毛 先斗町高麗夜話」で襲名への道をたどる

 平成8(1996)年2月国立劇場の日本舞踊協会公演で『三社祭』を踊った二人。「曲が速くてびっくりしました」。翌年予定していた『勢獅子』が上演に至らず、「やりたいですね、できるうちに」と、菊之丞

幸四郎と菊之丞の深くて長い関係

 今回は「幸四郎・菊之丞 創作の歴史」と題し、襲名までの道のりをたどるという趣向。出会いの鍵は、鼓の稽古でした。3つ年下の菊之丞の記憶に残っていたのは、「中学生くらいの発表会。僕も幸四郎さんに負けないよう打ちたいなと」。すると、「ムキになって通っていました、鼓の稽古は」と、幸四郎。菊之丞いわく、まるで「“おさらい会荒らし”のように、特別出演していた」染五郎少年は平成8年、菊之丞と『三社祭』を踊り、「同年代で唯一話せる仲間として、我々で新しいものができればと話した」と、当時を思い起こしていました。

 

 やがて生まれたのが傾奇おどり『魑魅魍魎的』や『麻布十番ん』。思い出を手繰るように創作の現場を振り返っていきます。「基本的には幸四郎さんが曲も考え、振りをつけて一緒にやる」、「振付は、僕はできないけどって言って振りを渡す」、「幸四郎さんがどうしたいのかわからないから皆が僕に聞くけど、僕もわかっているわけじゃない。推察し、当時から忖度(そんたく)していた」、「そう、忖度の走り」。客席をおおいに沸かせた創作秘話から見えてきたのは、二人の絶妙な関係でした。

 

幸四郎、菊之丞「襲名道中膝栗毛 先斗町高麗夜話」で襲名への道をたどる

 第2回の「趣向の華」では菊之丞がタテ鼓で演奏。なのに、「すっかり忘れて、初めての曲だと思っていた」と幸四郎。二人の自己採点はちょっと厳しめ

息ぴったりの演奏があの日の記憶を呼び起こす

 そんな関係が生み出す絶妙の掛け合いは、鼓の演奏としても披露されました。「え、そんな急に言われても…。まあ、やりますか」と、事前告知があったにもかかわらず、ご丁寧にひと芝居打った幸四郎がタテ鼓、菊之丞がワキ鼓として山台に乗り、長唄『松の翁』を演奏しました。先斗町の芸妓さんとの共演で、舞台が一気に華やぎます。

 

 久しぶりとは思えない打合せの妙で、二人の絆があらためて感じられたひと幕は、お客様も大喜びでしたが、誰より当人たちが「とても楽しい」と笑顔でした。そして、盛り上がりのまま、新作や挑戦の道のりをたどるトークが続きました。

 

やっとたどり着いた京の都の襲名披露話

 会場がおおいに沸いたところで、ようやく話が襲名披露狂言の『勧進帳』にたどり着きました。幸四郎が弁慶を初演した4年前の初日、「幕が上がる前のなんとも言えない雰囲気。待ち望んだ時がやって来た…。見る前から身震いしたのを覚えています」と菊之丞。そのとき、幸四郎は出を待つ鳥屋で、「弁慶が主役だから、(先輩後輩ではなく)スタンバイのときからそれにふさわしいところにいないといけないと教えていただきました」。千穐楽には弁慶100回を数える幸四郎、「これをやるために45年頑張ってきた。教わったことをすべて出し切ってできるようにやりたい」と、力強く語りました。

 

幸四郎、菊之丞「襲名道中膝栗毛 先斗町高麗夜話」で襲名への道をたどる

 ラスベガス公演では、毛振りの細かい振付に、公演が始まってからも連日稽古。幸四郎は「現地に到着してから帰る日まで、日を見ることはなかった」

 「最初から最後までまったく同じに振るというのが、僕の『連獅子』の解釈。菊之丞さんの毛振りは、曲に合わせたリズムで振り、振る回数も決まっている。細かいんですよ、振付が」。『連獅子』の話はラスベガスの『獅子王』の三人の毛振りのエピソードに飛び、ひとしきり笑ったあと、菊之丞が「『連獅子』を親子でやるのは最高でしょうね」とひと言、つぶやくようにもらしました。

 

親から受け継ぎ、子へ受け渡す

 息子の染五郎と親子共演する当の幸四郎は、「こんなにうれしいことはないですよ。でも、それを役に乗せるものではないと思っている」。取材で何度もそう話しているのは、「自分に言い聞かせているところがある」と言います。今回は、「私が初演したとき(昭和60年3月歌舞伎座)につくった前シテの衣裳を、使わせていただくことになりました」。親獅子は九代目から十代目幸四郎へ、仔獅子は七代目から八代目染五郎へと、衣裳も受け継がれることが明かされました。

 

 最後に、これからどんな新しいことをと聞かれ、またまた幸四郎の妄想が暴走、なぜか話が『趣向の華』ファイナルの伝説的新作、そうですね、で物語を進める『表裏おうち騒動』にまで及び、しびれを切らした南座宣伝部長のみなみーなが登場してお開きに。と思いきや、「形も色も、つくり込みすぎ!」と、みなみーなが幸四郎からお叱りを頂戴するひとくだりが続き、夜も深まったところで「先斗町高麗夜話」の幕が降ろされました。

 南座の高麗屋三代襲名披露は、「南座発祥四百年 南座新開場記念 京の年中行事 當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」が初日を迎える11月1日(木)から25日(日)まで。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で、10月15日(月)発売予定です。

2018/10/13