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歌舞伎座「七月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「七月大歌舞伎」初日開幕

 

 

 7月4日(木)、歌舞伎座で「七月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 昼の部は、九世團十郎が定めた「新歌舞伎十八番」より、活歴劇の代表作、『高時』から始まります。前半では、鎌倉幕府最後の執権北条高時(右團次)の傍若無人ぶりが描かれます。後半、酒に酔った高時の前に天狗たちが現れ、ところ狭しと飛び跳ねながら舞い、高時を翻弄します。轟く雷鳴に照らし出された躍動感のある光景に、観客もすっかり釘付けに。天狗が去った後、たぶらかされたと知り、虚空を睨んで口惜しげに一言放つ高時に、天から天狗たちの嘲笑が降り注ぎました。

 

 若き日の西郷隆盛(吉之助)と、その体格ゆえに“豚姫”という愛称で親しまれるお玉の純愛を描いた『西郷と豚姫』。西郷(錦之助)への報われぬ思いをいだくお玉(獅童)と、将来への希望がもてない西郷、二人が苦悩する胸の内をしみじみと語り合い、死を決意する場面は観る者の胸に迫ります。そこへ届いた知らせにより前途が開け、意気揚々と江戸へ発つ西郷の背中を、いつまでも見送るお玉。切ない余韻が残る、情感あふれるひと幕です。

 

 続いては、「新歌舞伎十八番」のなかでも上演機会の多い舞踊劇、『素襖落』。初演時に九世團十郎が勤めた太郎冠者を、海老蔵が本興行で初めて勤めます。使いに出た先で、酒をたらふく飲んだ太郎冠者。余興に、「那須与一」の物語を舞いながら語ります。褒美に素襖をもらい、おぼつかない足取りで帰った太郎冠者ですが、素襖を主人(獅童)に取り上げられ大慌て。ご機嫌になったり困ったりと表情をくるくる変えながら、太郎冠者が可笑しみある言動を見せるたび、場内は笑いに包まれました。

 

 切の『外郎売』は、七世團十郎が定めた「歌舞伎十八番」のひとつ。今回は昭和60(1985)年5月に、海老蔵が七代目新之助を名のって初舞台を踏んだときと同じ父子共演の趣向となっており、外郎売実は曽我五郎を海老蔵が、貴甘坊を堀越勸玄が演じます。工藤祐経(梅玉)、大磯の虎(魁春)、化粧坂少将(雀右衛門)らが並ぶ、華やかな宴席へ参上した外郎売の親子。口や喉に効く「外郎」の効能を示すべく、薬を飲んだ貴甘坊の口から、次々に早口言葉が飛び出します。約4分間にわたり朗々と、ときに抑揚をつけながら早口言い立てをする勸玄の姿に、思わず涙ぐむお客さまも。見事に早口を言い切った瞬間、客席から「成田屋」のかけ声とともに、万雷の拍手が巻き起こりました。小気味よい立廻りの末、最後は富士山を背景に、晴れやかな絵面できまりました。

 夜の部は、義太夫狂言三大名作のひとつ、『義経千本桜』を下敷きに、新たな趣向や宙乗りなどのみどころを盛り込み、壮大な物語を通し狂言として上演する『星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん) 成田千本桜』。碇知盛やいがみの権太、狐忠信をはじめ、主要な13役を海老蔵が早替りで勤めるという、これまでにない試みです。

 

 物語の発端では、源平合戦で死んだはずの知盛、維盛、教経(いずれも海老蔵)ら平家の武将が実は生きており、姿と名を変え源氏への報復の機会をうかがっていることが明かされます。続く序幕では、藤原朝方(海老蔵)から義経(梅玉)に初音の鼓が与えられる経緯や、夫の潔白を示すため自害した義経の妻、卿の君(海老蔵)、実の娘である卿の君を介錯する川越太郎(海老蔵)の悲哀が描かれます。一方、弁慶(海老蔵)は、頼朝方の討手と立廻り、敵の首を天水桶に放り込みかき回す、荒事の“芋洗い”を見せます。

 

 二幕目の冒頭、義経との別れを嘆く静御前(雀右衛門)は、危ういところを佐藤忠信(海老蔵)に助けられます。一方、静と別れた義経一行は、西国へ向かうべく船問屋の渡海屋へ。義経を助けるそぶりを見せる渡海屋銀平(海老蔵)の正体は、義経を狙う平知盛でした。しかし知盛の計略は義経に見抜かれており、逆に追い詰められてしまいます。安徳帝と乳母の典侍の局(魁春)は義経の部下に捕らえられ、入江丹蔵(海老蔵)は入水、そして知盛も海中へ身を投げます。最期を見届けた弁慶(海老蔵)が立ち去った後、花道に現れたのは知盛(海老蔵)の霊。執念から解き放たれた知盛が一歩ずつ宙を踏みしめ、あの世へ渡っていく光景は圧巻で、姿が消えてからも拍手が止みませんでした。

 

 維盛の部下、主馬小金吾(海老蔵)、そしていがみの権太(海老蔵)の悲劇が展開される三幕目。維盛を奉公人の弥助(海老蔵)として匿っている権太の父弥左衛門(海老蔵)に対し、維盛一家を差し出せと迫る鎌倉方の梶原景時(左團次)。自らの妻子を犠牲に、景時の詮議を切り抜けた権太でしたが、それとは知らずに怒る父の手にかかると、真実を明かして事切れます。死んでいく者と、残される者の哀しさが伝わるひと幕です。

 

 大詰には、いよいよ狐忠信(海老蔵)が登場。殺し合いを繰り返す人間たちに対し、ただ親を慕うばかりの狐の純粋さが浮き彫りになる場面です。荒法師を手玉にとって撃退した狐忠信は、義経から与えられた小鼓を抱え、宙を駆けて帰っていきます。最後は、本物の佐藤忠信(海老蔵)が、横川覚範実は能登守教経(海老蔵)を相手に、兄の敵を討ちます。狐忠信や弁慶、藤原朝方ら、幾人もの登場人物が入り乱れての息もつかせぬ立廻りに、客席も大いに喝采を送りました。

 

 みどころ尽くしの濃厚な人間ドラマの果てに待っているのは…。最後の瞬間まで見逃せません。ぜひ劇場で直にご覧ください。

歌舞伎座「七月大歌舞伎」初日開幕

 夏らしい模様に変わった、柱の横にかかるタペストリーにもご注目ください

 梅雨明けよりも一足先に、すっかり夏らしく衣替えした地下二階の木挽町広場。営業時間をご確認いただき、ぜひお早めにお立ち寄りください。

 

 歌舞伎座「七月大歌舞伎」は、7月28日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。舞台写真は、舞台写真館(スマートフォンはこちら)でお楽しみください。

2019/07/09