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幸四郎が語る、歌舞伎座「七月大歌舞伎」

幸四郎が語る、歌舞伎座「七月大歌舞伎」

 

 2025年7月5日(土)から始まる歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部『鬼平犯科帳』に出演の松本幸四郎が、公演へ向けての思いを語りました。

幸四郎が語る、歌舞伎座「七月大歌舞伎」

 『鬼平犯科帳』松本幸四郎(撮影:永石勝)

“二代目中村吉右衛門に捧ぐ”

 祖父の初世松本白鸚、叔父の二世中村吉右衛門が主演をしてきた『鬼平犯科帳』を、このたび幸四郎の主演・構成・演出により歌舞伎座で上演します。「叔父が28年間演じてきた“鬼平犯科帳”は、やはり特別な覚悟をもって勤めてきた作品なのだと思います。今回のお話をいただき、ありがたく幸せに感じました」と話し始めた幸四郎。「“新しい歌舞伎”、“二代目吉右衛門”、この二つが自分のなかでのキーワードです。今の“鬼平”である私が、“鬼平”を歌舞伎にしたらこうなるという決定版、“鬼平歌舞伎”と言ってもらえる作品をつくる。そして十二分に吉右衛門の鬼平を思い出していただきたい。それを頭の真ん中に置いて取り組んでいます」と、並々ならぬ覚悟があふれます。

 

 歌舞伎座の客席を背に平蔵が立つ特別ビジュアルでは、二世吉右衛門が着用していた衣裳を着けていると話し、「叔父がいたからこうして自分が平蔵として立っているという思いがあります。タイトルについている“二代目中村吉右衛門に捧ぐ”という言葉は、自分がこの“鬼平”をつくり上げることへの、プレッシャーではなくエネルギーになる。それを力にするぞという気持ちで、まずは初日に向かって突進していきたいですね」と、前向きな心境を明かしました。

 

人間・長谷川平蔵を描く

 数ある“鬼平”作品のなかで今回上演されるのは「血闘」。銕三郎と名のっていた若い頃から平蔵を知っているおまさという女性が登場します。「原作には少ない、銕三郎時代にクローズアップしている点は現在の“鬼平”の特徴ではないでしょうか。また、“鬼平”では、いわゆる捕まる人を中心に、平蔵がそれをどのように解決するかを描く作品が多いなか、本作は平蔵自身を描いている。平蔵としては珍しく、とても感情的な立廻りがあるということも、この作品ならではだと思います」。

 

 続けて、「“鬼平犯科帳”は人間ドラマ。悪人にも、そうならざるを得なかった背景が描かれている気がします。平蔵も、完全無欠のヒーローではなくて人間らしさがある。暴れ者だった過去をもちながら、いまは火付盗賊改方のお頭を勤めていて、悪人にも善人にも人として相対し受け止める強さをもっています」と、作品への深い解釈を伝えます。「人間・長谷川平蔵を、そして人間ドラマを深く描きながら、音楽的な要素や舞台機構を含め歌舞伎らしさも感じていただける作品にしたい」と、抱負を掲げました。

 

幸四郎が語る、歌舞伎座「七月大歌舞伎」

 

1日1日が大事な舞台 

 平蔵以外の登場人物について、「“鬼平”には、たくさんの登場人物がいます。その個性を活かすにはテンポ感が必要だと思っています。今回、錚々たる方々に出演していただけるのは本当にうれしい限りです」と笑顔を見せます。「市川團十郎さんが演じる普賢の獅子蔵は、原作になく、彼のためにつくった役。市川ぼたんさんが演じる少女時代のおまさも、本当に楽しみです」と、期待を込めました。

 

 このたび、父の松本白鸚が平蔵の父・長谷川宣雄を勤め、銕三郎を演じる市川染五郎とともに高麗屋三代で共演することもみどころの一つです。「まさに歌舞伎だからできること。『鬼平犯科帳』の宣雄、平蔵、銕三郎のせりふに、白鸚、幸四郎、染五郎の心が乗るような、リアルなのか芝居なのかと思うような、不思議な空間になればと思っています。1日1日が、本当に大事な舞台です」と、噛みしめるように話します。

 

 また、「七月大歌舞伎」の夜の部では、打ち出しの舞踊『蝶の道行』に染五郎と市川團子が出演します。「情熱的な踊りです。それを二人がどう勤めてくれるか。情感を発散できる踊りですので、熱い舞台にしてほしいですね。毎日、幕が閉まったときに、助国と小槇のように倒れるくらい情熱的に演じてほしい、そんな『蝶の道行』を目指してほしいと思っています」と激励しました。

 歌舞伎座「七月大歌舞伎」は7月5日(土)から26日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

2025/07/04